ママ友いじめから知った人生で大切なこと
私の体験が少しの希望になることを願って
幼稚園

38.仲良く遊んでいた。焦り顔&息を切らして駆け付けたママ

 

これまでずっと仲良くしてきた、三津屋さんと堀内さん。

2人は変わらず「ずーっと仲良しなんだろうな」と思っていた。

 

だけど。

その堀内さんを、三津屋さんはバッサリと切り捨てた。

 

気持良く晴れた初秋の週末。

今日も三津屋家には時任さん家の三美香ちゃんが遊びに来ている。

玄関先で女の子の話し声と笑い声が響いていた。

 

そこへ、三美香ちゃんを呼びに時任ママさんがやってきた。

すると三津屋さんも家から出てくる。

子どもだけではなく、ママ同士の交流も自ずとはじまる。

 

週末、三津屋さんとおしゃべりをする。

その相手はいつも堀内さんだった。

 

それが今では時任さんに変わった。

 

三津屋さんは時任さんと親密になりたいようだ、と思った。

なぜなら。

 

三津屋さんが三美香ちゃんにお菓子とジュースを出している。

三美香ちゃんが飽きないよう、タイミングよく次のおもちゃを持ってくる。

 

いままでの三津屋さんからは考えられない行動だった。

 

我が家からも見えているんだもの。

きっと堀内さん家からも同じものが見えているだろう。

 

憔悴して生気をなくしていた堀内さんの姿が思い浮かぶ。

 

せめて堀内さんの目の届かないところでやってくれればいいのに。

しかし三津屋さんはそんな事お構いなしで、時任さんとの距離をぐいぐい縮めようとしていた。

 

ご近所での遭遇

ひらりは近頃、縄跳びにはまっていた。

幼稚園で縄跳びをやる時期になり、年長さんになってやっと少しできるようになったので楽しくなったようだ。

 

しかも幼稚園で縄跳び大会があるので、その土曜日は練習もかねて外で特訓していた。

 

ひらりが気に入って練習していたのは、駆け足飛び。

走りながらリズミカルに縄を飛ぶやつだ。

 

まだたまにつっかえるけど、今までを思えば本当に上手になった。

飛びながら前に進んでるなんて感動ものだ。

 

だってひらりときたら。

ちょっと生真面目すぎると言うか。

どんくさいというか。

 

いまいち体の動かし方に慣れていない、そんなぎこちなさがあるんだもの。

 

母はちょっと心配していたのだよ。

でも練習すればできるようになるんだもんね、良かったよぉ!

山盛りのどんぐり

家の前で駆け足飛びをしていたんだけど、物足りなくなったらしい。

ひらりが駆け足飛びをしながら住宅街をお散歩したいと言ってきた。

 

せっかくなので、増山さん家や細貝さん家がある方向に向かってお散歩することにした。

もしかしたら幼稚園のお友達に会えるかも?

 

私はひらりに早歩きで付き添いながら、住宅街を進んだ。

すると。

 

住宅街を抜けるかどうかのあたりで、三美香ちゃんを見かけた。

ここが三美香ちゃんのおうちなのだろう。

バケツに水を入れて何かを洗っている。

 

支援センターでお話ししたこともあるので、一応親子でご挨拶してみる。

 

「こんにちは!」

 

三美香ちゃんは顔を上げて、人がいることに驚いたようだったがちゃんと挨拶を返してくれた。

 

バケツに水というシチュエーションが気になったようで、ひらりが三美香ちゃんに寄って行った。

「なにしてるの?」

「これはねー、どんぐりあらってるの!」

「え?どんぐり!?こんなにいっぱい?」

「すごいでしょ。」

 

三美香ちゃんはバケツにいっぱいのドングリを拾ってきて、それを洗っていたのだ。

水を切って、おままごと用のプラスチックのお皿にドングリを山盛り載せ、ひらりに見せてくれた。

 

「お水であらったら、きれいなんだよ。」

「ほんとだ、きれい!いいなぁ、ドングリ」

水にぬれたドングリが、太陽の光を浴びてつやつやきらり☆としていた。

子ども達を連れて

ひらりが「いいなぁ」と言ってドングリを眺めていたら。

三美香ちゃんが思わぬ提案をしてきた。

 

「ドングリほしいの?」

うんうん!うなずくひらり。

「じゃあいっぱい取れるところあるから、おしえてあげようか?」

「え、いいの??」

「いいよ!」

 

ママ、ドングリ取りに行ってもいい?という顔を私に向けるひらり。

 

今日はこの後の用事もないし、いいけど・・・。

って今すぐ行く感じ?!

 

「三美香ちゃん、もしかして今から連れて行ってくれるの?」

「うん、今から行こう。早くいかないと無くなっちゃうから。」

 

なるほど、確かにこの時期だとそうかも。

 

すると、善は急げとばかりに。

ひらりと三美香ちゃんは手をつないで歩きだした。

 

「ちょっと待って、ちゃんと三美香ちゃんのママに行き先を言っていかないと、心配しちゃうよ。」

「・・・あ、そっか。」

 

三美香ちゃんはそう言い、玄関を開けて「どんぐりとってくるー」と叫んだ。

 

ダダダという足音とともに、家の中から慌ててママさんがでてくる。

4人もお子さんがいるんだもん、忙しくて当然だよね。

 

私は家から出てきた時任ママさんにご挨拶をした。

時任さんはひらりと三美香ちゃんが一緒にいるので驚いていたようだ。

 

なんでドングリを取りに行くことになったか。

これまでの経緯を説明したら、納得してもらえた。

 

ドングリを拾いに行きたいのはひらりだし。

時任ママさんにご心配をおかけするわけにもいかない。

 

子ども達には私がついていくこと、時間は1時間くらい、行き先はお山公園、帰りは家まで三美香ちゃんを送り届けます、と伝えた。

 

そういうことなら、と三美香ちゃんママからもOKがでて。

私とひらりと三美香ちゃんの3人は、バケツを持って仲良く歩きながらお山公園に向かった。

 

慌てて駆け付けたママ

お山公園は住宅街から歩いて5分くらいのところにある。

子どもの足だと10分くらいになるかな。

 

ひらりと三美香ちゃんは手をつないで歩いている。

 

支援センターで数回会ったくらいだけど、ドングリで意気投合したようだ。

園児同士でトークしながら、2人は楽しそうに歩いていた。

 

お山公園には、大きいドングリや長いドングリ、小さいドングリや丸いドングリもあるらしい。

探し方のコツや、どんなところにたくさん落ちてるか、など。

さすがにバケツ一杯ドングリを拾うだけあって、三美香ちゃんは詳しかった。

 

公園に付く前から、ひらりと三美香ちゃんは。

まるで宝探しにでも行くような、うきうきわくわくな顔をしていた。

ドングリを拾おう!

公園につくと、2人は手をつないだまま駆け出した。

どんぐりがたくさん落ちている場所めがけて一直線。

 

私は微笑ましく思いながら、歩いてあとを追いかけた。

 

子ども達が探している場所について様子を聞いてみると。

やっぱり他の子も取りにきたようで、あんまり落ちてないとがっかりしていた。

 

それでも葉っぱをどかしながら丁寧にさがせばドングリが落ちている。

 

2人は手分けしながらドングリ拾いをはじめた。

「ひらりちゃんはここね、みみかはここさがすから~!」

まだ年長さんの2人だけど、ちゃんと協力するのが身についていて偉いなと思った。

 

私は近くにあったベンチに腰掛けて、2人が声をかけあってドングリを探す様子を楽しく眺めていた。

自転車で息を切らして

拾い始めてしばらくすると。

公園に男の子たち数人がやってきた。

小学校低学年くらいかな。

 

ボールとグローブを持っているので、キャッチボールをするのかなと思いきや。

 

その男の子たちもドングリを拾いだした。

やっぱりみんなドングリ好きなんだね。

 

だけどポチポチしか落ちてないので、男の子たちはすぐに飽きてしまったようだ。

 

すると。

男の子たちは拾ったドングリを、ひらりと三美香ちゃんに「いらないから、あげる」と、渡してくれた。

2人が必死に探しているのが伝わったのだろう。

 

2人は大喜びだった。

これはもはや「惚れちまう」勢い?(笑)

 

ドングリをくれた男の子たちはそのままボールとグローブをもってどこかへ行ってしまった。

おそらく近くの広場でキャッチボールをするために移動したのだろう。

 

すると、その男の子たちと入れ替わるようにして。

自転車にまたがって、息を切らして大急ぎで公園にやってくる大人がいた。

 

見間違いかと思ったら違った。

やっぱりそれは三美香ちゃんのママだった。

 

血相を変えて、ぜいぜいと息を粗くして、大慌てで走って公園に入ってきた。

(どうしたんだろう?)

 

「何かありましたか?」

三美香ちゃんママが近くまできたので、声をかけた。

 

だけど。

私の方はみないで、わが子を注視する三美香ちゃんママ。

いかにも無事を確認しにきた、みたいな??

 

肩で息をしながらわが子を見つめている。

 

三美香ちゃんに声をかけるでもなく、三美香ちゃんの様子をみている。

 

なんだなんだ??

 

時任さんは「ほぅ。」っと息を吐いてこう言った。

「いえ、なんでもないです。」

 

何か心配事でもあったかな?

 

「三美香、迷惑かけないようにね。」

「かけてないよー。」

時任さんは一言だけ三美香ちゃんに声をかけると、そのまま背を向けて帰ろうとした。

 

なので。

「もう少ししたら送っていきますね。」私はそう三美香ちゃんママに伝えた。

すると。

「あ、はい。宜しくお願いします。」とにこやかにお返事がかえってきた。

 

本当に。

さっきの慌てようはなんだったんだろう?

 

様子がおかしい気がした

用事があって慌てて迎えに来たのかと思えば、そうでもなく。

三美香ちゃんに一言だけかけて帰るって、何だったんだろう。

これまで時任さんとは数回しか会ったことないし、そこまで親しい仲ではないから急に心配になったのかな?

 

私だったらどうかな、って考えてみた。

確かにあまり親密ではない人にわが子を任せるのは、心配かもしれない。

そう思ってさっきの「時任さんの慌てよう」を納得しようとしていた。

子どもを送り届ける

約束の時間が近いので、そろそろ帰ろうと子ども達に声をかけた。

ひらりと三美香ちゃんは仲良く、「今日の記念に落ち葉を拾おう」と話し合っていた。

 

確かにこの公園はドングリもあるけど、落ち葉もキレイ。

美しく紅葉した葉があちこちに落ちていた。

葉っぱの形もあれこれで、見ているだけで本当に面白い。

 

バケツに半分のドングリ。

子ども達の手には紅葉した落ち葉。

 

私達3人は今日の戦利品を持って帰路についた。

 

時任家に着くと。

三美香ちゃんとひらりは早速拾ったばかりのドングリを洗おうとした。

 

するとそこへ三美香ちゃんママがビニールを持って現れた。

「三美香。ここにひらりちゃんのドングリ分けてあげて。そしたらバイバイだよ。」

「えー、まだ遊びたい。」

「だめ。」

 

あ、なんかやっぱり用事でもあるのかな?

長居したら良くなさそう。

私は時任さんの口調から、そう感じとった。

深く考えなかった

三美香ちゃんがひらりと一緒にいたくて、なかなかビニールにドングリを入れようとしない。

なので、ママさんがビニールにドングリを入れ始めた。

 

バケツのドングリが半分になったくらいで、三美香ちゃんママがビニールをひらりの所へ持ってきた。

「ひらりちゃん、はいどうぞ。」

「ありがとう。」

 

私も一緒にお礼を言った。

「ありがとうございました。三美香ちゃんと一緒に遊べて、ひらりもとても楽しかったようです。」

「あ、そうですか。」

 

あんまり長居しないほうが良さそうだったので。

「じゃあ、三美香ちゃん今日はありがとう、またね。」

そう言って帰ろうとした。

 

すると。

「ままー、今日なんにも用事ないって言ってたじゃん。なんでバイバイしなきゃいけないのー?」

三美香ちゃんがそう言った。

 

三美香ちゃんママはさっと横を向いて表情を見えなくした。

「・・・用事ができたの。だからバイバイだよ。わかった、三美香?」

 

表情は見えないけど、声が硬い。

 

なんか、あれかな。

急に公園に行くことになって、時任さんに何かご迷惑をお掛けしちゃったのかな?

 

せっかく楽しく過ごしたのに、変な感じになってお別れするのは嫌だったので。

三美香ちゃんと三美香ちゃんママにもう一度お礼を言って、帰ることにした。

 

帰る道すがら。

そういえば、三美香ちゃんを送り届けたけど。

時任さんにお礼も言われなかったな。

 

まぁ一緒に遊んでもらったし、そういうものなのかなぁ?

 

何度も「バイバイだよ。」と言っていたのだけ、記憶に鮮明に残った。

 

この時はまだ全然気が付いていなかった。

三津屋さんと時任さんが仲良くしていること。

三津屋さんがどういう人なのか、それを本当の意味で分かってはいなかった。