先生に相談して一時期は良くなったものの。
結局元通りになってしまったし、前よりひどくなった部分もあった。
ひらりはその後。
泉ちゃん以外の子とも仲良くなったけど。
少しでも仲良くなったら、連れ去られるというのが続いて。
結局友人らしい友人ができないまま、教室に居ずらくなってしまった。
ひらりにとって教室は。
学びに行く場所と言うよりも、もはや戦場。
毎朝自分を奮い立たせている様子が、見ていてつらかった。
だけど。
こんな時こそ、俯いてはいられない。
こんな時だからこそ、できることがある。
この苦難を、ただの苦難としてとらえない。
自分達を磨くチャンスだと思って見てみよう。
そう考えてみることにした。
感謝に目を向ける
先生に相談しても子ども達が変わらないのは。
心の中までは変わっていないからだ。
彼女たちにとっては、ひらりと仲良くするメリットはどこにもない。
仲良くしてしまったら、学童で自分たちが困ることになる。
仲良くしてしまったら、教室でジャイアンちゃんに狙われる。
みんなで仲良くしましょう、とならないのは。
皆、自分を守りたいからだ。
誰かを生贄にしてでも、自分は助かりたいからだ。
だからそう簡単に心の中は変わらない。
そして誰も人の心は変えられない。
変えられるのは「自分」だけ。
自分だけは変えてゆくことができるんだ。
心が温まる道へ
毎日いろいろあると、辛い事や悲しい事に目が向いてしまい、そのことに心が占領されてしまう。
だけどここでよく思い出してみて欲しいのは。
本当に嫌な事だけしか無かったですか?ということ。
例えば給食が大好きなメニューだったとか。
朝の通学でカワイイ猫をみたとか。
教室の窓から見える並木の緑がきれいだったとか。
心に降り積もる嫌な事から少し離れて、自分の日常にある小さな素敵に目を向けてみると。
いつもとは少し違った気持ちになれる。
その目線でものをみれば。
ひらりにはまだ救いがあることに気がついた。
クラスの女子全員がひらりに冷たいわけじゃない。
確かに仲良くはしてくれなくても。
ちゃんとクラスメイトとして接してくれている子はいた。
ひらりには。
毎日小さな素敵を見つける事と、自分と普通に接してくれる人に感謝することをお勧めしてみた。
自分の周りには冷たいものばかりではない。
ちゃんと暖かなものもあると、ひらりなら気がつけると思う。
もっと自分に集中する
これは私自身がいじめにあった経験からくるものだけど。
人に避けられているなら、その状況をうまく使った方が良いと思う。
人からどう言われようと、揺るぎのない自分になること。
それができれば、この先そう困ることはなくなる。
そのためにできるのは。
自分を伸ばしてゆくこと。
自分を高めてゆくことだ。
宿題などのやらなければならない事はちゃんとやって、その上でもっと趣味に時間を割いても良い。
好きなスポーツを極めてみてもいい。
大好きなドラマを観まくってもいい。
ドキドキワクワクは、自分を幸せに導くためのアンテナだから。
こんな時こそ自分の「好き」にもっと集中してみて良いと思う。
自分を磨く時間として
ひらりは手芸が趣味だった。
なので、一緒に100均へ出向いて欲しがっていた手芸用品をたくさん買った。
100円だからたくさん買ってもそこまでの金額にならない。
ビーズやアクセサリーパーツ、刺繍糸やフェルトなど。
作ってみたいものがすぐ作れるように。
色々な材料をそろえた。
学校で嫌な事があっても。
もくもくと手芸に没頭できる時間があれば、ひらりはリフレッシュできるようだった。
大切なのは、嫌な事から思考を離すこと。
そのために趣味はとても役に立つ。
他にも。
学校にいる間、教室に居場所がないのなら。
図書室やパソコンルームに行くのはどうかと提案してみた。
そのような部屋は冷暖房完備だったりするし、他の学年の子もいる。
教室にとどまっているよりは遥かに落ち着くのではないだろうか。
ひらりは図書室で本を読むようにしたらしい。
おやつ作りの本を借りてくるようになった。
やっぱりここでも、自分で作るという部分に興味があるようで。
一緒に材料を買いに行って、本をみながらおやつを作ったりして楽しんだ。
楽しい事。
好きな事。
それをやりながら、自分に自信を付けていこう。
それをやりながら、自分を磨いてゆく時間にしよう。
自分のやりたいことに時間を使ってみよう。
そしてもっと自分を知ろう。
自分自身が自分をよく知っていれば、人に何を言われても冷静でいられるから。
悪意を受け止めない
もうひとつ、ひらりに提案したこと。
それは受け止め方を変えることだった。
このクラスの子ども達は、言葉遣いが・・・。
あまり宜しくない。
うぜえ=こんにちは
うせろ=元気?
イラつく=良かったね
とまあこんな感じで。
脳内変換してみてはどうかと思った。
言葉をそのまま受け取ってしまうと、ものすごく気分の悪い事を言われている気がするけど。
彼女達にとってはそれらの単語は大した意味もない、日常使いの言葉なんだと思う。
自分とは感じ方・考え方が違う。
その言葉を使われると、ひらりはそこに良くないものを感じてしまう。
だけど。
だけどもしかしたら。
この子達にしてみたら。
それは何の意味もない、ただの単語として発せられているかもしれないと思えば。
特に怖い言葉でもない。
酷い事を言われた。
嫌な事を言われたと思わず。
日常会話だと思っておけば平和でいられる。
関知しなければ無敵
同じように「悪意」も。
感じないように工夫すればいけるかもしれない。
意地悪をしようとしているわけではない。
ただ、そうなっちゃっただけ。
仲間から外そうとしたわけではない。
ただ、そうなっちゃっただけ。
例えばここに「お菓子」があるとして。
視界に入って「あ。お菓子がある」と気がつけば、そこにお菓子が存在するけど。
視界に入ってもお菓子に気がつかなければ、無かったのと一緒だ。
そういう感じで。
受け止め方を変えてみたらどうだろう?
嫌な視線も、感じなかったことにする。
こちらをみている目つきも、気がつかなかったことにする。
それらの事に気がついてしまうと、心が荒んでしまうから。
心が傷ついてしまうから。
まだ3年生のひらりにとっては難しいことかもしれないけど。
自分の受け止め方を変えることで、少しでも教室に居やすくなるなら試してみてはどうかと思う。
人は変えられない。
それなら自分を変えよう。
自分を変えられると知れば。
自分を変えることに挑戦してみれば。
それはまた新たな自信につながって、自分を力強く生かす糧になると思う。
ひらりと相談しながら。
こうやって大まかに3つの対策を立ててみた。
自分を変える事が、ひらりにとって学びになるといい。
ねちねちと友達ができないように操作されているとしても。
人に悪感情を向けず、自分を高めることに向かっていって欲しい。
私はそう思っていた。