そういえば・・・。
(そろそろ幼稚園の母主催「ランチ会」の日だなぁ。)
改めて時間と場所を確認しておこう。
新興住宅地に新居を建てて引っ越してきたので、ここは自分の地元ではない。
なので土地勘がないのだ。
ランチ会の会場になっているお店も、案内をもらって初めて知った。
年少さんの母達が一堂に会するので、大きめの会場を予約したそうだ。
カフェランチが人気のお洒落なお店らしい。
カフェでランチなんて久しぶり!
子連れじゃない、母達だけ。
そんな状況にちょっと警戒しつつも、楽しみな気持ちのほうが勝っている、そんな私でありました。
PTA母達主催の親睦会とは
幼稚園で親睦会と称する「ランチ会」のお便りをもらった、初授業参観の日。
帰り際に教室を出たところで、ちょうど増山さんと一緒になった。
「増山さん、こんにちは!いつも風華ちゃんにはお世話になってるようで、本当にありがとうございます。」
「いえいえ、こちらこそ。風華もひらりちゃんのおかげで幼稚園に行くのが楽しみって言ってるんですよ。」
風華ちゃんにはいつも良くしてもらってるようで、ひらりの口からもしょっちゅう名前がでてくる。
一緒に遊んだとか、バスでお話ししてたとか。
なのでお会いしたらお礼を言いたいと思っていたのだ。
風華ちゃんもひらりの事を気に入ってくれてるようで安心した。
少しの世間話のあと、そういえばと思い出す。
機会があったら聞こうと思っていた、ランチ会の件を聞いてみることにした。
幼稚園から推奨されている
風華ちゃんのお兄さんが今まで通っていただけあって、増山さんは幼稚園の行事や事情に詳しかった。
増山さんから教えてもらった話はこうだった。
母達が自主的にランチ会を催しているのではなく、幼稚園からの要請で行ってる会であること。
主催者はその学年のPTA役員であること。
ランチ会は年に2~3回あること。
時にはランチではなく夜の飲み会になる場合もあること。
参加は強制ではなく、都合のつくときに行けば良いこと。
幼稚園が親睦会を推奨しているので、お便りの印刷や配布も手伝ってくれること。
ふむふむ、なるほど。
幼稚園が「親睦を深める会をやってね」って推奨してるのかぁ。
ほぇ~、そんなこともあるんだね。
ちなみに増山さんは参加しますか?と聞くと、この学年で初めての顔合わせになるから行くと言っていた。
年度はじめと年度末は参加者が多いとも言っていた。
年度はじめは「宜しくお願いします」で、年度末は「お疲れさまでした」というテイストらしい。
そいうわけなので、幼稚園初心者の私は参加した方が良さそうだと判断した。
まずは1回行ってみないと、どんなものだかも分からないしね。
ランチ会のお便り
家に戻って一息ついたら、ランチ会のお便りを読み返してみる。
手書きの印刷物で文字がかわいい。
私は字が可愛くないので、こんな素敵に書ける気がしない。
開催日時は今からおよそ1カ月半後。
ってことは梅雨明けか夏の初めぐらいか。
かなり前から準備するものなんだね。
場所は聞いたことのないお店で、2階。
この地域のことをよく知らないからイメージすら湧かない。
もしかして結構人気のあるお店だったりするのかな?
時間は11:30~14:30で、幼稚園にお迎えにいく人やバス通学の人でも差し支えない時間なんだと思った。
費用は選んだメニューによって変わるようで、お支払いは当日受付で、とのこと。
その下にはメニュー表がついていて、事前予約になるのでお好きなランチをお選びくださいとあった。
「日替わりパスタセット」
「ハンバーグセット」
「チキンステーキセット」
「サンドイッチセット」
「ハンバーガーセット」
全品サラダ・ドリンク・デザート付き
未就園児さん同伴で、食事が必要な方は「お子様ランチ」も注文できます。
うわぁ、美味しそう!
どれも気になるなぁ。
小さな子のためにお子様ランチも注文できるなんて、気が利いてる。
手書きのお便りなので、さすがにメニューの写真までは載ってない。
なのでネットで調べてみることにした。
そのお店は家と幼稚園の中間くらいにあって、結構にぎやかな場所にあった。
車でいくと大変そうなのでバスで行こうかな。
お洒落な雰囲気のカフェレストランで、ママ達がランチ会の会場に選ぶのも納得だった。
お便りのメニューは通常のランチメニューだったようで、お店のホームページに写真が載っていた。
盛り付けからお皿まで、にくいくらいお洒落だなぁ。
せっかくなので他では食べられないものを選んでみよう。
写真をみていくと、でっかいハンバーガーが目に留まる。
この店の一押しだそうな。
(TVでみたことあるけど、実際にこんな強烈なハンバーガー食べたことない!)
よし、これにしよう。
お便りの下の方は切り取り線がついていて、「出欠席」と「選んだメニュー」と「支払い金額」と「参加者の名前」を記入するようになっている。
ここに記入して切り取ればいいのね。
書いた紙は連絡帳に挟んで、幼稚園に持たせるんだって。
オッケーィ!
ランチ会に参加する
幼稚園からプール準備のお便りが来た数日後。
いよいよランチ会当日がやってきた。
用意していた外出用ワンピースに着替える。
初の授業参観用に買ったワンピースがとっても良かったので、これから私のファッションはコレだな、と追加で買い足したのだ。
着心地よし、伸縮性あり、洗濯機で洗えて、乾くのも早い、尚且つシワにならず、ひざ下丈で上品。
ワンピースだから上下の組み合わせでアレコレ悩むこともない。
にもかかわらずお値段は・・・リーズナブルッ!
ジャージーワンピース、ブラボーーー!
鏡のなかの自分をみる。
いつもより2割増しGOODな気がする。
自分が気に入ってる服を着るって大事よね。
気持ちが上向きになるもの!
こうやって気分を盛り上げつつ、食事が楽しみだから行きたいような、ママ達に会うのが緊張するから行きたくないような、そんなランチ会に出陣するのでした。
隣の席になったママさん
会場のカフェに到着し「予約の・・・」というと、スタッフさんがにっこりしながら2階へ案内してくれた。
やはり年少さんのママはほぼ全員が参加だったようで、2階は貸し切りになっていた。
テーブルをいくつかくっつけてあり、大きな島が2つになっていた。
クラスごとに分かれるのかなと思いきや、来た順に詰めて座ってくださいとのこと。
増山さんが見えたので近くがいいな・・・と思ったけど、そういう訳にはいかなかった。
初対面のママさんと隣になった。
別のクラスなんじゃないかな、見かけたことがない。
きれいなお肌にきれいなお化粧、上品だけどどこか可愛らしい、そんなママさんだった。
ご挨拶するとニッコリしてくれて、話してみるととっても気さくな人だった。
お名前は「新井さん」。
3人お子さんがいらっしゃって、全員男の子なんだそうな。
とても3人もお子さんがいるようには見えない!
しかも今幼稚園の年少さんにいるのは3人目だそうで、もう何年もこの幼稚園にいるのよ、と言っていた。
お家はウチと逆方向で、ちょっと遠いかな。
でも詳しく話を聞いてたら学区は一緒なんだって。
学区広すぎない?(笑)
だから小学校も一緒らしい。
私の反対側の隣も別のクラスの方だった。
細身で髪がきれいなママさん。
こちらの方はなんとご近所だった!
ウチの住宅街の近くにお住まいらしい。
お子さんは女の子でバス通学。
それならきっと、ひらりも知ってるんじゃないかな。
名前は「細貝美鈴(ほそがいみれい)ちゃん」って言うんだって。
細貝さんも、美鈴ちゃんが長女なので初の幼稚園。
お互い知らない事ばかりだけど、頑張りましょうねと励ましあった。
初対面のママさんに囲まれたけど、こんなに和やかにお話できて良かった。
ほっと胸を撫でおろしていたら「全員が集まったので・・・」と司会者の声がかかり、ドキドキワクワクのランチ会がはじまった。
誰かを思い起こさせる人
順番にランチが運ばれてくる。
自分の注文したものが運ばれてきたら、手を挙げる。
ハンバーガーセットを注文した人も結構いた。
やっぱり人気メニューなのかな。
ハンバーガーはすごいボリュームで、とてもじゃないけど手で持って食べられる代物じゃない。
なので、ちゃーんとナイフとフォークが付いてきた。
みんなで「美味しい~」とか「お洒落~」とか言いながら食べる。
隣の細貝さんも、カフェランチなんて久しぶりで・・・と目を輝かせていた。
食事が終わってデザートがきた頃。
向かいの席のママさんの話声が耳に入ってきた。
「でさー、手作りプリンをもらったんだけど、入れ物がビンでさ。それをどうしろっていう話よ。洗って返せばいいわけ?しかもさ、手作りプリンを寄こしてくるなんて、もしかして『私できるのよ』っていう自慢なのかと思っちゃう。まじでアイツ迷惑。」
(・・・・・。)
向かいのママさんは私に向かって話してるわけではないんだけど、あんまり声が大きいから聞こえてしまった。
話の内容からして、どうもこの会にきている誰かの話らしい。
こんなに人がいる中で、ここにいる誰かの事を平気で「迷惑」と言えてしまう、そのママさんに・・・。
鳥肌が立った。
怖いと思った。
手作りでプリンを作ってくる、確かに入れ物がビンだったのは配慮が足らなかったのかもしれない。
でもそれが蒸しプリンだったら、やっぱり捨てられる容器でつくるのは難しかったと思うし。
なんにしても、作ってプレゼントしてくれたという相手の好意を、自慢じゃね?とかまじ迷惑とか、そうんな風に受け止める人間性が怖かった。
・・・誰かを思い出した。
そう、三津屋さんだ。
人の好意を素直に受け止めない。
それどころか、嫌いな人の好意ならなおさら捻じ曲げる。
この幼稚園にもこういうママさんがいるんだ。
それがとても残念でならなかった。
女の人間関係は難しい
ランチ会でたまたま向かいの席になったのは「山辺さん」といった。
はじめにお互い自己紹介だけして、その後山辺さんはすぐ自分の隣のママさんとお話しして盛り上がっていた。
なので私とは本当にご挨拶だけだった。
男の子3人の母である新井さんとは面識があったようで、ちょこちょこ会話していた。
結局のところ山辺さんは、面識のある人とだけおしゃべりをしていたので、私も細貝さんも会話に加わることはなかった。
それはそれで良かったんだけど・・・。
どうやら山辺さんも子だくさんのお宅らしく、何年も幼稚園にいるママさんらしい。
なので知り合いが多くて顔が広い。
しかもこの様子だと・・・。
ボスママっぽい???
・・・またしても何という席に座ってしまったのだろう。
好きでここに座ったわけではない、ただの偶然なのに。
そういう訳で、聞いたらまずそうな話は聞こえてないor聞かないようにして、やりすごすことにした。
隣の細貝さんも同じ考えのようだ。
にこにこと和やかな笑顔をかまし、お店やデザートの感想など話題も当り障りのないよう気を付ける。
山辺さんは知り合いママさんと盛り上がっていたし、私の事など明日になれば忘れているだろう。
私も山辺さんの事は忘れよう。
だって・・・。
たまたま虫の居所が悪かっただけかもしれないしね。
それにしても。
やっぱり女の集団は苦手だ。
どこでどんな思惑が張り巡らされているかわからない。
誰が何を思っているのか、本当のトコロは分からない。
ただ私は、慣れない人間関係のなかで「節度のある大人の付き合い」を心掛け、心穏やかにまっとうに生きるしかないと感じていた。