ひらりが風邪をひいて熱をだし、お遊戯会をお休みした年の暮れ。
体調が回復して幼稚園に行った頃、幼稚園はクリスマスムードに染まっていた。
冬休みに入る直前にクリスマス会が行われ、ひらりは園からプレゼントをもらって帰ってきた。
ひらがなを覚えるのにちょうど良い、どうぶつカルタだった。
ふむふむ、これで年末年始遊ぶということだね?(笑)
ひらりの話によると、クリスマス会ではクリスマスの歌を歌ったり、手遊びをしたそうだ。
そしてサンタさんにも会ったと言っていた。
給食にもケーキがでて、ひらりは大満足の様子だった。
あと数カ月したら、ひらりも年中さんになる。
つい最近入園したと思ってたのにな。
こうして穏やかに年末を迎えることができ、今年一年無事に過ごせたことを心から感謝した。
お誕生日会へ行く
年が明けて冬休みも終わり、幼稚園がはじまった。
幼稚園ではお正月について色々お話があったようで、お正月の歌を歌ったり、お手玉などで遊んだと言っていた。
特にひらりが気に入ったのは先生手作りの「福笑い」で、ママも作ってとせがまれた。
確かに、あれ面白いよね。
私も子供の頃自作して遊んだなぁ。
そして幼稚園からのお土産で持ち帰ってきたのは、ひらりが作った「絵馬」だった。
花の形に切った折り紙を貼り付けてあって、なかなかきれい。
「ひらり、上手にできてるね!」
「おはな、いっぱいにしたのー」
作ったひらりも満足そう。
絵馬の裏をみると、なにか書いてある。
『ケーキやさんになれますように』
・・・ん?
ひらりってケーキ屋さんになりたかったの?と聞くと、恥ずかしそうに答えた。
「けーきやさんになったら、まいにちケーキがたべられるでしょ?」
そういうことね(笑)
かわいらしいお願いが書いてある絵馬を、リビングの飾り棚に置いた。
そこに向かってひらりが「パンパン」と手をたたき、手のひらを合わせる。
絵馬を拝み始める真剣なひらりをみて、思わず吹き出しちゃう私でした。
クレープをいつ食べた?
幼稚園が始まってしばらくすると、今度は「お誕生日会」のお知らせがきた。
ひらりはもうすぐ4歳。
幼稚園でもお祝いしてくれるなんて嬉しいなぁ。
ひらりは早生まれなので、なかなか自分のお誕生日会がこないと嘆いていた。
なのでずっと楽しみにしていたのだ。
お誕生日会当日。
教室でこじんまりとやるのかな、と思いきや大ホールに通された。
どうやら全学年でお誕生日会をするようだ。
保護者席が一番後ろ、その前に園児席、最前列がお誕生日席のようだ。
全員が揃ったところでお誕生日会が始まった。
今月お誕生日の子ども達が、厚紙でできた冠をかぶって入場してくる。
ひらりもピンクのほっぺをして嬉しそうに入場してきた。
みんなで歌を歌って、クイズ大会をした後、ステージの上でお誕生日さんへのインタビューがはじまった。
お名前を教えてくださいとか、何歳になりましたかなどのベーシックな質問がされ、園児がマイクを向けられながら順に応えていく。
全生徒の前でステージの上にいる。
そしてマイクに向かってしゃべる。
めったにない経験だからみんな緊張してるんだろうな。
それでも堂々とした様子で順番に答えていた。
ひらりもちゃんと答えられて、母としてはほっとした。
最後に「好きな食べ物はなんですか?」という質問がきた。
はは~ん。
ひらりはケーキ屋さんになりたいって言ってたから、ケーキって言うかな?と思ってみていた。
他の子は「メロン」「いちご」「ぶどう」など、フルーツ系が多かった。
ひらりの番が来た。
恥ずかしそうにもじもじした後ひらりはこう言った。
「・・・クレープです!」
ほ?
クレープとな?
あなたいつクレープを知ったの?
てかいつ食べたの?(笑)
買い食いが発覚
フルーツが多い中、クレープと答えたので注目されてしまった。
園児たちが一瞬ざわついた。
先生からも「ひらりちゃんクレープ好きなんだ、おしゃれですね」とのコメントを頂いてしまった。
ところがそんな事気にしないひらり本人は、とっても誇らしげな顔をしていた。
言えた、言えたわ!というような(笑)
ママ、面白すぎて椅子から落ちるところだったよ。
お誕生日会が終わって、私は一足先に家へ戻った。
お誕生日会も面白かったなぁ。
にしても、ひらりは何でクレープなんて言ったんだろう?
ひらりが幼稚園から帰宅したので、クレープ知ってたの?食べたことあるの?と聞いてみた。
すると、ひらりはもじもじして答えない。
テレビとかで観てそれで言ったのかな?と聞いたら。
困った顔をして「パパとたべたの。でもひみつなの。」と言った。
(・・・なるほどね。)
近くのスーパーに行くと、たまにクレープを売るワゴン車がきているのだ。
たぶんあれだな。
あのワゴン車のクレープを食べたのね。
夫が帰宅したので、クレープの件を聞いてみると。
ひらりと2人でこっそり食べたと白状した。
なんで教えてくれなかったの?と聞いたら、無駄遣いしたって言われるかと思って・・・だそうな(笑)
その日はクレープの話題で盛り上がり、今度はみんなで食べに行こうと約束した。
ひらりはまたクレープが食べられると大喜びしていた。
幼稚園からの電話
3月に入った頃、珍しく家の電話が鳴った。
家に電話がかかってくるなんて珍しい。
実は私は、ひらりが幼稚園に行くのと同じ時期から、在宅でできる仕事を始めていた。
以前勤めていた会社から依頼があり、在宅でできるPC関連の仕事をしていたのだ。
もし仕事関係なら携帯に連絡がくるはずだし、家に電話なんて誰だろう?
そう思って電話にでる。
「もしもし、わたくし野木桜幼稚園の鈴木と申します。」
(あら、先生だ。何かあったかな??)
ドキドキしながら話を聞くと、なんと来年度の役員をお願いできないかという内容だった。
誰も立候補しなかった
確かに先日、来年度役員の立候補を受け付けますので名前を書いて提出してください、という用紙がきてたな。
そういうのは幼稚園に詳しい人がやったほうが良いと思い、立候補なんて考えなかった。
先生によると、立候補者がいなかったので引き受けてくれる人を探しているそうだ。
幼稚園には色々とお世話になっているので貢献したいと思う反面、私よりも適任がいるのではないかとも思う。
仕事もあるから、これ以上幼稚園に時間を割くのもな・・・。
そうは言っても暇なママさんなんているわけない。
みんな同じだよね。
とりあえず、私よりも幼稚園に詳しくて適任の方がいらっしゃると思うのですが、とお返事すると「まだ役員をやっとことのない方に是非やってほしい」とのこと。
確かに在籍期間が長い方は役員の経験がありそうだ。
そんなに何度もお願いするのも申し訳ないのかな。
迷っていると先生に畳みかけられるように説得された。
「年長さんになると役員以外にも、卒業時の謝恩会担当も選ばれるんですよ。結局何かしらやることになると思うので、年中さんになる今のタイミングが良いと思います。」
・・・先生説得するのがうまいね!
迷ったけど、やっぱり幼稚園初心者の私にできるかどうか不安だった。
なのでこう答えた。
「う~ん、他にだれも引き受ける方がいなかったら前向きに検討します。」
「わかりました。その時は宜しくお願いしますね。」
そう言って電話は切れた。
その後先生から連絡が来ることがなかったので、きっとどなたかが引き受けてくれたんだろうと、私は思っていた。
役員をやると腹をくくる
3月、春休み前。
年少さん最後の授業参観があった。
その時に年中さんのクラス分け発表もあるそうだ。
いつものようにお気に入りワンピースを着てでかけた。
まだ肌寒いけど少し春を感じられる陽気だった。
数日後に行われる卒園式にむけて、子ども達は歌の練習をしていた。
授業参観の最後には、担任の先生から1年を締めくくる挨拶があった。
この1年無事に楽しく安心して過ごせたのも先生のおかげだなぁと思い、しみじみとした気分になった。
お話が終わると、子ども達はお帰りの支度をはじめた。
今日の授業参観は午後だったので、このまま子どもを連れて一緒に帰るのだ。
あとは帰りの会をして、年中さんのクラス発表があって、帰るという流れ。
すると。
ざわざわしている教室を横切り、私に向かって一直線に先生が歩いてきた。
(あれっ、わたし?先生わたしに用事があるの?)
そして先生が小声で話しかけてきた。
「すみません峰岸さん。来年度の役員の件なんですけど、どなたも引き受けてくださらなかったので・・・。ぜひ峰岸さんにお願いしたいです。」
(うぉぃ先生・・・。やるな。今このタイミングでくるとは!断れないじゃないですか(汗))
「は・・・はぁ。」
「ありがとうございます!おねがいしますね!」
前向きに検討します、と言ったはずなんだけど。
検討する時間もなく決まってしまった・・・!
そうだよね。
幼稚園にはお世話になってるんだし、いつかやらなきゃいけないなら、頼まれてる時にやろう。
その後クラス分け発表と、役員の発表があり、私は年中さんの役員をやることが確定した。
・・・や、やるからには頑張らなきゃね。
わたし、ちゃんとできるかなぁ。