ママ友いじめから知った人生で大切なこと
私の体験が少しの希望になることを願って
小学1年

42.お隣さんと同じクラス。グループを作って群れになるママ

 

見事に満開の桜並木。

ひらりの通う小学校は小高い丘のような土地に建っていて、ゆるやかな坂の上にあった。

その坂道の街路樹として、桜が植えられている。

 

桜の花びらがちらちらと落ちて、子ども達が歩く歩道は薄ピンク色になっていた。

 

今日は入学式。

ひらりは小学生になる。

 

天気は気持ち良いほどの晴れ。

ひらりと手をつないで、坂道を登っていく。

 

学校の門を通って児童玄関へ行き、まずは教室へむかう。

 

教室にはすでに担任の先生がいて、子どもの出欠を確認しながら席に座らせていた。

保護者は子どもを教室に送り届け、体育館へ向かう。

 

入学式が行われる体育館の、保護者席に向かうのだ。

 

幼稚園と違って、小学校の体育館は大きくて広い。

ビデオカメラを準備してみたけど。

小さくしか映らないかもしれない・・・。

 

そうこうするうちに入学式がはじまり、子ども達が拍手のなか入場してきた。

子ども用スーツや晴れ着に身を包んだ子ども達が、緊張した面持ちで進んでいく。

 

ひらりも幼稚園の頃とは違い、きりっとした表情で颯爽と歩いていた。

親戚からもらったお古のセレモニースーツだけど、とっても似合ってる。

私は晴れ晴れとしたひらりの表情を、心のカメラに収めていた。

 

同じクラスになる

小学校のクラス発表は、3月末の春休み中に行われた。

名札なんかの準備があるもんね。

それくらいには知らされてないと困る。

 

児童玄関のところに紙が貼り出されているだけなので、それをカメラで撮影した。

こうしておけば後でゆっくり確認ができる。

 

児童玄関前は保護者でごった返していたので、ひらりの名前だけ、どこのクラスにあるか確認して帰宅した。

 

カメラを取り出して、家でゆっくりとクラス名簿を確認してみる。

すると。

 

・・・・・
・・・・・
三津屋 桃亜
峰岸 ひらり
・・・・・
・・・・・

ん?

んんん?

 

なんと、お隣の三津屋さんと同じクラス。

しかも名簿は1個前。

 

みつや
みねぎし

そ、そりゃ、そうなりますよね(汗)

 

入学式の並びは「名簿順」だったようで。

ひらりの前に桃亜ちゃんがいた。

 

これまでの事を思い返せば。

 

2歳の頃、三津屋さんと関係がこじれてからずっと。

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桃亜ちゃんママも、桃亜ちゃんも、私達家族のことを無視してきた。

赤の他人のほうがまだマシだと思える間柄。

 

クラス替えは2年ごとなので、これから2年間はクラスメイトとして一緒になることが確定している。

 

母として願うのは。

 

子どもは子どもでお付き合いをして欲しい。

お互いを知ることによって、子ども同士は良い関係を築いて欲しい。

そう思っていた。

お隣さんで席は前

入学式は無事に終わって、子ども達と保護者は各教室に戻ってきていた。

教室の入り口で三津屋家ご夫妻と、斗輝くんを見かけた。

 

私と三津屋さん。

どういうわけだか、ご縁があるんだと思う。

 

家がお隣。

同じ学年。

同じ性別のこども。

同じクラス。

席は前後。

 

見たくなくても見えてしまうし。

知りたくなくても知ってしまう。

 

桃亜ちゃんは。

自分の席に座りながらも、何度も何度も後ろを振り返っている。

 

後ろの席のひらりに用事があったわけではない。

教室の後ろに並んで立っている、桃亜ちゃんのパパとママを見ているのだ。

 

先生のお話がはじまっても、桃亜ちゃんは振り返るのをやめなかった。

1人で座っているのが不安だったのかもしれないし、パパとママが自分を見ているかが知りたかったのかもしれない。

 

終いには。

先生がお話し中でも全く気にする事なく。

桃亜ちゃんは振り返って、ママに手を振り始めた。

それに応えて、にこやかに手を振り返す三津屋さん。

 

「先生がお話ししている時は、先生を見ましょう。」

そう幼稚園で教えられてきたひらりは、後ろを振り返ったりしないのでよく表情が見えなかったが。

桃亜ちゃんの行動にびっくりしているようだった。

 

子どもらしくて微笑ましいと言えば、その通りだし。

入学したばかりなのだからと言えば、その通り。

 

席に座って先生のお話を聞けないことを、とやかく言うつもりは全くない。

まだ子どもなんだもの、そんな時だってある。

 

ただ、困ったなぁと思うのは。

 

こうやって視界に入ってしまうこと。

見たくない事も、知りたくない事も、私たちのアンテナに引っかかってしまう。

 

そして。

 

それはきっとお互い様で。

私達のことは、三津屋さんのアンテナにも引っかかってしまうという事。

 

幼稚園と保育園で、別々に過ごして薄くなったご縁が。

また濃くなる気配がした。

離れたくても離れられないご縁を感じはじめていた。

 

挨拶の度に嫌な顔

私は三津屋さん達に無視されていたけれど。

目が合った時、玄関先で出会ってしまった時は、欠かさず挨拶をしてきた。

挨拶だけでも続けることが、大人として最低限のマナーだと思ったし、そういう私の姿勢を見ている人がいると思ったから。

 

そんなことが続いていたある日。

 

三津屋さんが、ご近所いじめのお仲間、堀内さんとの関係をバッサリ切ってから。

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三津屋さんは挨拶を返してくるようになった。

 

ご近所いじめは、表面上「堀内さんがやってるから私も仕方なく合わせてます」という体裁を装っていた。

なので堀内さんと関係が切れたら、その理由がなくなる。

 

だから挨拶を返すようになったのかもしれない。

 

もしくは時任さんという新しいママ友ができて、私のことはどうでもよくなったのかも知れない。

 

諸行無常。

変わらないものなどないのだから、三津屋さんの気持ちも何か変わったのかもしれない。

私はそんなふうに、好意的で楽観的に受け止めていた。

いたんだけど・・・。

いじめは終わりなんだよね?

三津屋さんが挨拶を返してくれるようになった。

それは「無視」の終わりを告げている。

 

ひらりが2歳の頃から続いた4年間に及ぶご近所いじめ。

さすがに4年もやればもう飽きたよね?

 

堀内さんとの関係も終わったことだし。

いじめは終わりだよね?

 

そう私は思っていたんだけど。

 

挨拶を返してくれた後の三津屋さんの顔がスゴイので。

否が応でも気になってしまった。

 

挨拶をする一瞬は、口の端を上げて微笑っぽい形をつくる。

でもその後すぐに無表情で泥のような目をして表情を消す。

更に頭を横に向けて視線を外し、顔をゆがめて今にも吐きそうな「ケッ!」っていう動きをする。

 

うーん。

あのさぁ。

全部見えているんだけど。

もしかして見せてるの?

 

これはどう受け止めたらいいのかなぁ?

 

本当はお前に挨拶なんかしたくないんだ。

うざい、どっかいけ。

 

そういうこと??

 

もしくはこの変な表情と動作は、三津屋さんの癖かなぁ?

 

悪く受け止めたらきりがないし、良い事もない。

だから気にしないようにしてるんだけど。

やっぱり何度挨拶してみても。

三津屋さんからは、嫌がられているような気配を感じていた。

 

グループを作り群れ始める

入学式が終わったので、ひらりを連れて児童玄関に向かった。

「入学式」の看板の前と、「入学おめでとう」の花飾りがある玄関、その二か所で記念撮影をしよう!

私と夫は交互にカメラを持って、ひらりと記念撮影をした。

 

ちょうどそこへ、同じ幼稚園だった女の子が何人かきたので、お友達同士の写真もたくさん撮った。

みんな幼稚園の制服姿ではないので、とても新鮮で可愛かった。

女の子だけあって、髪型も凝っていてすごくお洒落!

 

幼稚園つながりのママさんにも、改めて「これからもどうぞ宜しくお願いします。」とご挨拶した。

お互いかしこまった感じがこそばゆくて、顔を見合わせて笑ってしまった。

ご近所ママの集まり

記念撮影も終わったので、さて帰ろうとなった時。

近くの集団に目が留まった。

 

三津屋さんと時任さん、外されていた新ママさんと、五之治さん、他に3人。

 

(新メンバーママについてはこちら)

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実は今日、今まで名前すら知らなかった「新メンバーママ」の名前がわかった。

それはなんと、新ママさんも同じクラスだったから。

名前は「磯部さん」で、男の子のママさんだ。

 

五之治さんは支援センターでご挨拶したことがある。

隣の住宅街に住むママさんで、同じ学年の女の子がいる。

 

名前のわからないママさんのうち1人は、同じクラスだったんじゃないかな。

さっき教室でみかけた気がする。

 

三津屋さんと一緒にいるママさんのほとんどがご近所さんなので。

おそらく他のママさんもお近くに住んでいるんだろうと思った。

時任さんは顔が広いので、そのつながりもあるんだと思う。

 

三津屋さん達ママの集団は何やら話しこんでいて。

その合間に、三津屋さんは桃亜ちゃんに何かを告げた。

すると子ども達から「やったー!」とか「わーい!」とかいう歓声が聞こえた。

 

多分だけど。

三津屋さんと一緒にいるママさん親子は。

これから一緒にどこか行くか、一緒に遊ぶか、そんな様子にみえた。

 

そしてその反対側に。

同じように見慣れたママの集まりもあった。

山辺さんと坂東さんの、幼稚園ママ集団だ。

 

入学式が終わってすぐ。

ママ達の社交はすでに始まっていた。

 

私はどの人とでも、一線を越えないちょうど良い距離感で、大人のお付き合いをすると決めている。

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なので、どこの集団にも属す気がないけれど。

すぐに群れたくなる女の心理に、いまいち共感できないでいた。