ママ友いじめから知った人生で大切なこと
私の体験が少しの希望になることを願って
回想

57.皆と違うから嫌う?異物扱いで学校の人間関係に馴染めない

 

私は小学4年生になるタイミングで引っ越しをした。

これまで離れ離れで暮らしていた母と、再婚相手の新しい父と、新しい暮らしを始めるために。

 

父は会社にお勤めしていたし、母も家計のために仕事を辞めなかった。

なので我が家は共働き世帯だった。

 

この時代は。

専業主婦であるお母さんが常に家にいる、そんな家庭が圧倒的に多かった。

ウチのような共働きはごく僅かだった。

 

そして土曜日まで学校があった。

土曜は午前授業で給食がない。

 

お腹を空かせて家に帰ると。

近所の家からは焼きそばのソースの香りがする。

いいにおいだな、美味しそう、と思う。

 

私は首からぶら下げているカギを取り出して、玄関のドアを開ける。

共働きで両親共に不在。

家には誰もいない。

 

これまでゼリー等のお菓子は作ったことがあっても、ちゃんとした料理はしたことがなかった。

母が買っておいてくれた、冷凍食品のグラタンを電子レンジで「チン」する。

 

誰かが帰ってくるまで、私は家で1人で過ごした。

夕飯の時間になっても誰も返ってこなくて。

外が真っ暗になっても誰も帰ってこなくって。

夕飯も1人で食べる、なんて事もよくあった。

 

慣れるまでは鍵を開けるのが怖かった。

知らない誰かが家に入ってたらどうしよう?

もしかしたら泥棒が中にいるかも?

 

変な考えが浮かぶくらい、誰もいない家に入るのが怖かった。

 

現在のような「学童保育」とか、そんなの無かった時代。

祖母が待ってくれている家に帰る生活から一転。

私は俗に言う「かぎっ子」になっていた。

 

人と違うのはそんなにダメですか?

母が再婚したので、私に「お父さん」ができた。

それで苗字も変わることになった。

 

今まで使っていた学用品の苗字部分を書き換えた。

気が付いたところは全部なおした、はず、だったんだけど。

 

やっぱり修正しきれてない所があった。

 

新しい学校の教室で。

「あれ?これ苗字がちがうね?西園寺さんのであってる?」

「あ、うん。それ私の。ありがとう。」

「もしかして。再婚で苗字が変わったの?」

「・・・うん、まぁ、そうかな。」

「へーえ。」

 

これを皮切りに、私が「再婚家庭の子」だということが皆に知れ渡った。

 

「母子家庭だから」といじめられなくなったかわりに。

今度は「再婚だから」「複雑な家庭の子だから」と言われるようになった。

 

父親ができたら普通の子になれる、そう思っていたのに。

やっぱり私は異端のままだった。

 

母子家庭だからと避けられて、こんどは再婚だからと避けられるようになってしまった。

 

周りと違う家庭環境。

普通じゃないからと避けられる。

人と違うって、そんなにいけないことなのかな?

多数派は正解なのか

テレビでよく見かけるホームドラマの家庭。

父と母が揃っていて、子どもがいて、ドタバタしなからも毎日楽しく暮らし成長していく、みたいな。

 

こうやってテレビでやってるのを皆が見てるから、これが家庭の在り方だと思われてるのかもしれない。

 

テレビでやってるような家庭は、テレビでやってるぐらいなんだから正常で。

それに合わない家庭は正常じゃないおかしな家庭。

 

そんな風に見えるのかもしれない。

 

再婚してお父さんができたことが嬉しかった。

お父さんがいたらどんななだろう?ってよく想像してたし、お父さんがいたら私もみんなと同じになれるんだと思っていた。

 

だけど違った。

テレビのホームドラマでは「離婚」→「母子家庭」→「再婚」なんてやってない。

私はどう足掻いても、皆の思う正解にはなれないと知った。

 

母子家庭だからの次は再婚だから?

ふ~ん、そうなの?

そんなにダメなことなんだ?

私はもう笑うしかなかった。

 

多数派に所属していることが正解で、少数派の私は不正解。

それなら。

あなたたちのやっていることは正解なのか。

私を忌み嫌うのは正解なのか、そう言ってやりたかった。

複雑な家庭の子だから

他にも、こんな受け止められ方もした。

複雑な家庭の子だから気を付けなさい。

どんな風に育つかわからない。

いつ非行に走ってもおかしくないんだから。

 

私自身がどういう子かというよりは、整ってない家庭環境に育っている子という意味で忌避されていた。

 

ならば聞かせてもらおう。

整った環境に育って素晴らしいであろうあなた方が、なぜ平気で人を傷つけるのか。

円満な家庭で余裕のある暮らしをしているあなた方が、なぜそんなに人の痛みがわからないのか。

 

私には。

「人と違う」部分を突ついて裁く人たちの方が、危険人物に思える。

この子は複雑な家庭で育ってるから危険人物になるかもしれないと言う人の方が、よっぽど危険人物に思える。

 

この世の中は理不尽で。

人と違う私に安住の地はなかった。

 

事実とは違う噂話

再婚家庭の子だというのが皆に知られてから。

私は女子の噂話のネタになった。

 

私の事をチラチラ見ながら口元を隠す女子のグループ。

え?とか、うそ?とか、うわ~とか。

そんなリアクションをとりながらこっちを見てる。

 

はじめは「再婚なんだって」というシンプルな内容だったが、そこにどんどん尾びれ背びれがついていって。

もはや私の噂話をするのはレクリエーションの一環になってるんだな、と思った。

 

ワイドショーで盛り上がるおばさん達同様。

クラスの女子たちは噂話で盛り上がる。

そして私を日常的に注意深く観察し、ネタを漁るようになっていた。

陥れようとする輩

たわいもない内容ならまだよかった。

だんだん内容がエスカレートしていって、事実とは違う噂を流されるようになった。

 

「貧乏すぎてお腹が空いてるみたい。この前拾い食いしてるところ見た子がいるんだって。」

「あ、それ私も聞いた。なんか道に生えてる雑草とかも家に持って帰って食べるんだってね。」

とか。

 

「この前、A君(クラスで1番人気の男子)に色目使ってたらしいよ。なんかさりげなく手とか触っちゃって。気をひこうとしてたらしい。」

「何それムカつく!そうやって媚を売る女ってイヤだよね。」

とか。

 

事実無根なんだけど、こうやって「人から聞いた風」を装って。

いかにも本当っぽく話られていた。

 

そこには私の評判を貶めよう、私を敵視させよう、そんな意図が感じられた。

 

噂が耳に入った時点で否定するけど。

「あぁ。恥ずかしいから否定してるんだな。」

「あぁ。女子に嫌われたくないから否定してるんだな。」

そう思われて全然信じてもらえなかった。

 

私は4年生になってやってきた転校生。

親しい友人などいなかった。

 

友達になるより先に「再婚」と言われてしまい、避けられたから。

だから、肩をもってくれる人はいなかった。

ただただ噂を流され続けた。

 

そしてそれが。

新たないじめの始まりだった。

 

友達の輪はすでに出来上がっていた

4年生にもなれば、お互いに気心が知れて友人関係もできあがってくる。

家が近い子達、一緒に通学してる子達、習い事が一緒の子達、放課後一緒に遊ぶ子達。

などなど。

 

その時々に応じて、気の合うもの同士でグループになる。

 

4年生になって転校してきた私は、知り合いがいない状態からのスタートだったから。

事あるごとに1人になってしまう。

そこにはもちろん「再婚だから」も影響していたし、事実無根の噂話も影響していたと思う。

 

自分から話しかけたり、昼休みに一緒に遊んでみたり。

交流を持つことはできたけど、一線を引かれているというか。

友達として認めないという雰囲気がどこかにあった。

 

それは。

すでに仲良しの子がいるからあなたを入れるつもりはない。

そんな感じだった。

 

クラスにはすでにいくつかのグループが出来上がっていた。

みんな気心が知れて安心できる相手なのだろう。

 

私のような新参者がそこに入っていくのは難しいことだった。

「普通の子」だったらまだしも、再婚で変な噂がある子を率先してグループに入れようなんて子はいなかった。

異物として扱われる

授業で。

「だれかと2人組になってください」

これが苦痛だった。

 

だって必ず私があぶれて1人になる。

だれも組んでくれないから、先生と組むことになったり。

 

自分はこのクラスで必要とされていない、1人なんだなって事をまざまざと感じざるを得ないから。

そしてそれを恥ずかしいと思うから。

 

自分はこのクラスに押し入ってきた「異物」。

そう思われているんだなって、感じていた。

 

この人たちは私の事を何も知らない。

何も知りもしないのに避ける。

そして私のことを知りたいとも思ってない。

 

私はクラスに馴染めなかった。

私はクラスで浮いていた。

私はクラスに友達がいなかった。

 

すでに出来上がっている人間関係に入るのは至難の業だった。

私はただただ、このクラスの異物だった。