ママ友いじめから知った人生で大切なこと
私の体験が少しの希望になることを願って
回想

58.人間不信になりそう。学校では底意地の悪いいじめが横行

 

そういうわけで。

小学4年生の前半は教室で孤立していて、周囲から要らない子扱いをされていた。

57.皆と違うから嫌う?異物扱いで学校の人間関係に馴染めない 私は小学4年生になるタイミングで引っ越しをした。 これまで離れ離れで暮らしていた母と、再婚相手の新しい父と、新しい暮らしを...

 

そして小学4年生の後半からは、いじめが始まった。

 

この時期、テレビやマンガで「不良」や「暴走族」が注目されて、流行していた。

不良や暴走族のように、ちょっとグレるのが。

どういう訳だかかっこいいと思われていた。

 

それで子ども達のなかでも、「ちょっと悪い事をする」のがかっこいいと認識された。

「ちょっと悪い事をする」のはアリなんだと認識された。

 

暴力を振るうわけでもなく、万引きのような犯罪行為でもない。

うまくやれば証拠も残らない悪い事。

 

「いじめ」

 

いじめに手を染めるのは彼女達にとってお手軽な方法だった。

いじめに手を染めるのが彼女たちのステイタスになった。

 

もちろんまず手始めにいじめにあったのは私。

無視、悪口、仲間外れが今まで以上に徹底して行われた。

クラスの女子の中にボスがいて、その子が取り仕切っていた。

 

ボスの思い通りにしないといじめにあうから、みんな必死で任務を遂行していた。

ボスのご機嫌を必死でとっていた。

 

するとその組織のなかでちょっとした不満がでてくる。

他にもボスをやりたい子がでてくる。

そしてボスの側近に悪口を吹き込んだり正論をぶちかましたりという根回しをして、「下剋上」を起こした。

 

女子のボスが入れ替わる。

ボスになった子が喜び勇んで、気に食わない子をいじめの標的にする。

例えば元ボスを数週間外して大人しくさせたら、別の子を、というように。

 

いつの頃からか、まるで回覧板のようにいじめがまわってくるようになった。

 

私はそもそも女子から外されていたので。

いじめチームに属すことはない。

ましてや下剋上の根回しチームに入ることもない。

 

どこにも属さない私は。

彼女達からみれば影響力のカケラもない役立たずで、引き込む価値のない厄介者だったんだと思う。

 

教室のなかでは度々下剋上が行われ、ボスも入れ替わって。

悪口や根回し、恨み辛み、不安恐怖が教室に充満していった。

 

私はただただ女子から疎外されながら、または定期的にいじめのターゲットになりながら。

まるで戦国時代のような。

まるで政治家のような。

そんな女子の見事ないじめっぷりを見ていた。

 

親友詐欺

ある時「えりこちゃん」という子が、いじめのターゲットになった。

えりこちゃんは前ボスの側近だった子なので、現ボスから恨みをかっていたのだろう。

 

そんなえりこちゃんが。

常に外されて1人でいた私に近づいてきた。

 

「西園寺さん、今までごめんね。私、こうやっていじめられるようになって初めて西園寺さんの気持ちがわかったよ。」

「・・・ありがとう。えりこちゃんも大変そうだね。」

「あのさ、西園寺さん。私達これから親友にならない?」

 

私の気持ちがわかると言ってくれたこと。

これから親友になろうと言ってくれたこと。

それがとても嬉しかった。

 

えりこちゃんと教室で一緒にいることも増えたし、一緒に下校もするようになった。

 

ある日の帰り道。

えりこちゃんがいじめられているのが辛いと言った。

そして現ボスの悪口を言い始めた。

 

私は常に外されているので、誰がボスでも同じだった。

だから特に現ボスに思うところもなかった。

ただ「またやってるな。」くらいのものだった。

 

だけどえりこちゃんがあんまり憎々しげに語るので。

「へぇ、そうなんだ。」

「大変だね。」

「意地悪は嫌だね。」

と、理解を示す相槌を打っていた。

 

えりこちゃんはよっぽど悔しかったのか。

途中からは泣きながら悪口を言っていた。

私をそれを「うん、うん」と聞くことしかできなかった。

心を踏みにじって利用する

翌朝のこと。

えりこちゃんと現ボスと側近たちが教室の隅に集まっていた。

 

私が教室に入ると。

その集団が一斉にわたしを睨みつけてきた。

 

私は。

昨日あんなに悪口を言っていたえりこちゃんが、現ボスと一緒にいることに驚いていた。

 

つかつかと肩で風を切りながら現ボスが私の方へやってきて、顔を近づけてこう言った。

「あんた色々と私の悪口を言ってくれたんだってね?覚悟はできてるんだよねぇ。」

「・・・へ?」

 

何の事だかわからずに、咄嗟にえりこちゃんの方をみる。

 

えりこちゃんは。

しなった弓のような、細い三日月のような目でニタリと私をみていた。

口の端がゆっくり上がっていき、俯きながらもそこには喜びの表情が現れていた。

 

そこで全てを悟った。

えりこちゃんが言った悪口を、私が言ったことにしたんだと。

私が頷いて聞いていたことを「同意見」と受け止めて、ボスに密告したのだと。

 

私は驚愕のあまり言葉を失った。

一気に体温を失って倒れそうになった。

 

いじめられる辛さがわかったと言ってたのに。

親友になろうと言ってたのに。

 

えりこちゃんは私を踏み台にして現ボスに取り入ったのだった。

 

えりこちゃんは現ボスの側近に引き立てられた。

えりこちゃんに対するいじめは終わった。

その分私に対するいじめがひどくなり、長期に及ぶこととなった。

近づいてきた目的

えりこちゃんはそもそも私と仲良くする気なんてなかったのだ。

自分がいじめから逃れるために。

そのために私に近づいてきたのだ。

 

はじめから利用するために。

信用させてそれらしい事実を作るために。

 

それくらいの事をやっても許される相手だと。

それくらいの事をやっても誰からも咎められないだろうと。

えりこちゃんはそう思ってやったのだろう。

 

自分のために人を平気で利用する。

自分のために人の心を踏みにじる。

自分のために人を騙すことすら厭わない。

 

恐ろしかった。

そして心から汚いと思った。

 

裏切られ粗末にされ利用されて。

心が流血して痛くて仕方がなかった。

心では滝のような涙を流していた。

 

だけどえりこちゃんは、そんなことどうだっていいよね。

私がえりこちゃんに抱いていた暖かな思いなど、ゴミくずだよね。

現ボスといちゃいちゃしながら、嬉々として私をいじめる側にまわっているんだもの。

 

むやみに人を信じてはいけないと。

こんな人間も世の中にいるんだと。

私はそう思って心を閉ざすことしかできなかった。

 

泥棒目的の友

5年生になってクラス替えがあった。

クラスが変ったけど、相変わらず私には友達がいなかった。

 

えりこちゃんの件もあり、私は自分から人と関わることをしなくなっていた。

 

そんななか、新しいクラスで1人。

私に話しかけてくる子がいた。

 

「まゆみちゃん」という小柄な女の子だった。

目がクリッとして可愛くて、人懐っこい子だった。

 

私が教室でぽつんとしていると、まゆみちゃんの方から積極的に話しかけてきた。

教室の中でも、移動教室でも、まゆみちゃんは常に隣にいるようになった。

 

私もまだ子供だったし、まゆみちゃんが話しかけてくれるのが嬉しかった。

私とまゆみちゃんは次第に仲良くなっていった。

急に距離を置かれた

ある時まゆみちゃんが、私の家に遊びに来たいと言ってきた。

かぎっ子で親もいないし、おもてなしもできないよと伝えると、そんなの全然構わないと言った。

 

まゆみちゃんは放課後、お友達の家に遊びに行くのが好きだそうな。

元気に自転車をこいでやってきた。

お手紙を書きあってみたり、鏡の前で髪を結ってみたり、他愛もないことをして過ごした。

 

私の家で遊んだので、今度はまゆみちゃん家にも行ってみたいと言ったら。

ママから「家に人を入れないこと」と決められているそうで、まゆみちゃん家に行くことはできなかった。

 

何度か私の家で遊んだある日。

まゆみちゃんは私が育てていた「アボカド」を欲しいと言った。

 

食べ終わったアボカドの種を水栽培していたのだ。

種から芽が出て、葉がついているものが2つあった。

 

まゆみちゃんが持って帰りやすいように入れ物を探していると。

 

「あそこの角のゴミ置き場に丁度いいビンがあったよ。私それがいいなぁ。」

「あ、本当?じゃあ見てこようかな。まゆみちゃんも一緒に行こう。」

「私はちょっとお腹が痛いから、ここで待っててもいい?」

「わかった、じゃあ探してくるね!」

 

まゆみちゃんを家に残して、私はゴミ置き場へ向かった。

 

ゴミ置き場に行って探してみたものの、それらしいビンは置いてなかった。

仕方がないので家に戻り、別の入れ物を用意してアボカドを渡した。

 

「まゆみちゃん、アボカドかわいいでしょう?一緒に育てようね。」

「うん、ありがとう!」

そう言ってまゆみちゃんは、アボカドを持って帰った。

 

その翌日から。

なぜかまゆみちゃんはよそよそしくなった。

もう私に話しかけてこなくなったし、一緒にいる事もなくなったし、遊びにくることもなくなった。

 

なんでそうなったのか、理由がわからなかった。

ただ、まゆみちゃんが今度は別の子にべったりなので。

もしかして飽きられちゃったのかなって、そう思っていた。

家から消えたもの

それから1週間くらい経って。

「クリスタルの粒がなくなってるんだけど、知らない?」と母に聞かれた。

 

母が使っていたクリスタルのネックレスの紐が切れてしまい、バラバラになったものを臨時の紐に通し小皿に入れて、本棚に置いていたのだ。

修理しようと確認したら、結んであった紐がちぎれていて数粒無くなっていたそうだ。

 

「もしかしてお友達にあげたの?それならちゃんと教えてくれないと困るな。」

「え、違うよ。誰にもあげてないし、触ってもいない。」

「あれ、じゃあなんで無くなってるんだろうね?」

 

変だなぁと思って最近の出来事を思い返してみる。

すると心当たりが。

 

私がアボカドの入れ物を探していた時。

まゆみちゃんは1人でこの家にいた。

しかもゴミ置き場には、まゆみちゃんが言っていたビンなどなかった。

 

それに。

はじめて家に来た時、本棚に置いてあるクリスタルの粒を見て「すごくきれいだね」って言ってたっけ。

 

疑っちゃいけないけど。

でも限りなく怪しい。

アボカドを持って帰った日から、私に素っ気なくなった。

 

もしまゆみちゃんがクリスタルを勝手に持っていったんだとしたら。

もしまゆみちゃんがクリスタルを盗んだんだとしたら。

辻褄が合う気がして怖くなった。

必要な情報は流れない

翌日まゆみちゃんにクリスタルを知らないか聞いてみた。

「まゆみちゃん。まゆみちゃんが『きれいだね』って言ってたクリスタルの粒がなくなっちゃったんだけど、知らない?」

「クリスタル?私は知らないよ。」

「あれはクリスタルってやつで、ビーズに見えたかもしれないけど高価な物だったらしいの。」

「えっ。あ、そうなんだ・・・。」

「もし持ってるなら教えて欲しい。本当のことを言ってくれるなら、あのクリスタルはまゆみちゃんにあげてもいい。」

「・・・。クリスタルなんて、し、知らないよ。」

 

目が泳いでて。

とっても怪しかった。

それほどまでにクリスタルを欲していたのなら。

正直に「欲しい」と言ってくれれば、分けても良いと思っていた。

 

バラバラになって修理しないままになってたネックレスだもん。

紐が切れた時に数粒どっかに行っちゃって、どう修理するか迷ってたやつだもん。

母だって数粒なら、あげてもいいよって言ったはずだ。

 

でも疑っちゃいけないし、もしかしたら。

もしかしたら、家に粒が落ちてるかもしれない。

その可能性だってあるのだから、それ以上言わず確認に留めた。

 

その数日後。

母からの置き手紙があり、足りない食材をスーパーで買っておいて欲しいと書いてあった。

買い出しのメモをもってスーパーに行くと。

 

野菜売り場のあたりにまゆみちゃんがいた。

まゆみちゃんのお母さんも一緒だった。

 

目が合ったので、手を振りながら近づいて挨拶しようとした。

すると、まゆみちゃんの胸元にキラリと光るものが。

 

自作のビーズネックレスを付けているんだけど、その真ん中の数粒に見覚えが。

その粒。

うちにあったクリスタルだよね。

 

ネックレスを凝視した私の視線に気が付いて、まゆみちゃんはネックレスを手で隠した。

苦笑いを浮かべて、気まずそうな顔をしている。

 

ここでクリスタルについて追及してもよかったけど。

まゆみちゃんのお母さんの前だ。

 

だから、言わなかった。

挨拶をしてもまゆみちゃんは目を逸らしていて、早く私にいなくなって欲しい、そんな感じだった。

 

短い間だったけど、一緒に遊んだ仲だ。

私に楽しい時間をくれた。

だから。

もう、いいや。

そう思って、挨拶しただけでその場を離れた。

 

後日知った。

実はまゆみちゃん、人の家から物を盗む子で有名だったそうだ。

 

悪口や人を傷つける噂話はすぐ広まるのに。

こういった核心に迫る事実に基づいた噂話は、なかなか耳に入らないものなんだなと思った。

 

まゆみちゃんは盗みを働くけど、だからといっていじめられてはいなかった。

距離をおかれたり、適当に相手をされているだけだ。

 

常に噂を流されて外されているわたしよりも、人権が尊重されている。

 

盗みをやる子より、私の方が嫌われている。

それがなんか複雑な気分だった。

 

そしてやっぱり悲しかった。

盗み目的で近づいてきたんだとわかったことが。

 

まゆみちゃんも、私と仲良くしたかったわけじゃなかった。

盗んでも問題にならない、ちょうどいいカモだったから。

だから近づいてきて、用が済んだら離れていったんだなと思った。

 

仲を引き裂く

5年生になっても、引き続きいじめの嵐は吹き荒れていた。

回覧板方式でいじめが回ってくるのも変わらなかった。

 

そんななかで、やっぱりいじめに嫌気が差したのだろう。

そこまで真面目にいじめに参加しない子が、1人2人とではじめた。

ボスの前では合わせているけど、それだけって子。

 

そのなかの1人と仲良くなった。

「たまよちゃん」と言って、1人でいる方が好きな変わり者だった。

 

たまよちゃんと私の家は反対方向だったので、一緒に帰宅することができなかった。

それでも。

たまよちゃんとは妙に気が合って、お互いの家を行き来するほど仲が良くなった。

 

私の家では一緒におやつを作ることが多かった。

二人でお料理教室のマネをしながら、ゼリーやプリン、ホットケーキを楽しく作っていた。

 

たまよちゃんの家では、漫画を読ませてもらった。

私の家ではTVと漫画本は禁止だったので、色々な漫画があるたまよちゃん家はパラダイスだった。

 

今思い返せば。

たまよちゃんは俗に言う「おたく」の走りだったのかもしれない。

自分の世界を持っていて、趣味に熱い。

そんな子だった。

双方に不信感を持たせる

だけど、そんな私達を良く思わない子達がいた。

私には孤立していて欲しい。

私に友達ができるのはダメ。

 

どういう理由かは知らない。

 

私とたまよちゃんが一緒にいると、誰かが間に入ってくるようになった。

そしてたまよちゃんを強引に連れて、どこかへ行ってしまう。

 

学校にいる間、ろくにたまよちゃんと話ができないので。

一緒に遊ぶ相談をするのも困難になっていった。

 

そんな矢先。

とある女子がやってきてこう言った。

「西園寺さん。内緒なんだけどさ。たまよちゃんが、西園寺さんと遊ぶのつまらないって言ってたよ。何か別の遊びを考えたら?」

とか。

「この前小耳にはさんだんだけど。たまよちゃんが、西園寺さんのお母さんの事若くて派手でケバいって言ってたよ。ねえ、お母さんそんなにケバいの?」

とか。

 

たまよちゃんがそんな事を??って思った。

そんな子じゃないよなって思った。

 

だけど、その「たまよちゃんが言ってたよ」はなかなか効果的だった。

何度も言われるたびに疑心暗鬼になっていったのだ。

それはたまよちゃんも同じだったんだと思う。

 

たまよちゃんも。

「西園寺さんが言ってたよ」と何かしらを吹き込まれていたんだと思う。

 

私とたまよちゃんは。

こうして次第に、会話することもなくなっていった。

逆らえばもっと苦しむ

私とたまよちゃんが離れて。

私は再び孤立しはじめた。

 

すると「たまよちゃんが」と吹き込む女子は、私に寄ってこなくなった。

 

時間がたってくるとわかる。

引き離すのが目的だったんだな、って。

 

私とたまよちゃんは、アイコンタクトで理解しあう。

 

仲良くすることも、互いの家に遊びに行くことももうできない。

だって女子に見張られているから。

 

たまよちゃんの目をみればわかる。

わたしの事を嫌っていないって。

だからそれで充分だ。

 

ここで女子の圧力に逆らって、たまよちゃんと仲良くすれば。

更にむごい引き裂き方をしてくるだろう。

逆らえばもっと苦しむだろう。

 

そうしたら、たまよちゃんを今よりもっと苦しめてしまう。

 

だから私達はそれ以上近づかなかった。

アイコンタクトだけで、互いを思いあった。

 

その後少しして。

今度は「ゆきちゃん」と仲良くなった。

 

ゆきちゃんは色々な習い事をしていて、勉強ができて、きりっとした子だった。

ゆきちゃんとも互いの家を行き来するくらい仲良くなった。

 

でも結局同じことが起こった。

ゆきちゃんとの間に入ってきて、ゆきちゃんを連れていき。

今度は「ゆきちゃんが言ってたよ」がはじまった。

 

私とゆきちゃんは疎遠になるしかなかった。

 

女子の悪意が恐ろしかった。

底意地が悪くて汚らしかった。

利己的で執念深くて陰湿。

子どもが純粋だなんて、だれが言ったんだろう。

 

平気で人を裏切り利用するのが当たり前の世界。

私は人間不信になりそうなほど、辛く苦しかった。