ママ友いじめから知った人生で大切なこと
私の体験が少しの希望になることを願って
小学2.3年生

68.お互いを疑うよう仕向ける。相手を信じ切ることの難しさ

 

内藤家も。

やっぱり三津屋さんとつながりがあるのかもしれない。

 

いや。

学童に行っていた同学年女子だもの。

家もそれなりに近いし、つながりが無いわけがない。

 

ひらりと麻未ちゃんのところに、かんなちゃんが入るようになって。

それがもし三津屋さんの差し金だとしたら、目的はなんだろう。

 

桃亜ちゃんが麻未ちゃんを連れて行ってしまう事から考えれば。

おそらく目的は「麻未ちゃん」だと思う。

 

麻未ちゃんを独占したいからなのか。

それともひらりから麻未ちゃんを引き離したいのか。

 

私が小学生の頃うけたいじめのなかに、友達を作らせないように画策するものがあった。

教室の中でポツンと1人にさせておくのが目的のいじめだ。

58.人間不信になりそう。学校では底意地の悪いいじめが横行 そういうわけで。 小学4年生の前半は教室で孤立していて、周囲から要らない子扱いをされていた。 https://mam...

 

今は麻未ちゃんが仲良くしてくれてるから、ひらりが学校でそこまで寂しさを感じることはない。

だけど、麻未ちゃんと。

もし引き離されてしまったら。

そしたらどうなるだろう。

 

もちろん麻未ちゃん以外にお友達がいないわけではない。

だけど、ひらりにとって麻未ちゃんは特別なのだ。

 

麻未ちゃんはひらりを気に入ってくれてるし。

ご近所の他の子のようにひらりを遠ざけたりしなかった。

一緒に過ごすのが楽しいし、心穏やかにお付き合いできる、ひらりの大切な友人なのだ。

 

まさか三津屋さんは本気で。

子ども達の人間関係にまで介入してくるんだろうか。

子ども達の人間関係までコントロールしようとするんだろうか。

 

三津屋さんは相手の懐に入るのが上手い。

そして意図を匂わせて、自分に忖度するように仕向ける。

 

ターゲットになりたくない人や、三津屋さんと仲良くなっておきたい親たちは。

まんまとこれにひっかかるのだ。

 

内藤家の様子を注視してみると、やっぱりどこかおかしいと思う。

ひらりや私に、なにか思うところがあるように感じる。

 

どうかこのまま何事もありませんようにと願いながらも。

反対に、胸の中では嫌な予感が波紋のように広がっていった。

 

やっぱりそうきたか

ひらりを学校にお迎えに行った日。

その日は習い事の開始時間が遅いので、短い時間なら遊べる日だった。

 

いつもなら。

少しの時間でも一緒にあそびたいからと、麻未ちゃんも一緒に車にのって帰っていた。

 

だけど、その日は違った。

「麻未ちゃんはかんなちゃんと歩いて帰るから、だから乗って行かないって。」と、ひらりは残念そうに言った。

 

こればっかりは仕方がない。

そこは麻未ちゃんの決めることで、麻未ちゃんの意志だから。

 

残念そうにしているひらりを励ましながら。

麻未ちゃんの気持ちを尊重するのも友達だよ、と話した。

 

でも、それを皮切りに。

徐々に麻未ちゃんとひらりが遊ぶ日が減っていった。

 

時には送迎後すぐに習い事に行かねばならず、急いでいる日に。

ひらりとは全然遊ぶ時間がない日に、麻未ちゃんは車に乗せて欲しいと言うようになった。

かんなちゃんも乗せて家まで送って欲しい、と言うようになった。

 

かんなちゃんと麻未ちゃんを送るのは全然構わない。

ひらりを迎えに来ているわけだから、何の手間もない。

1人も3人も一緒。

 

ひらりも。

車の移動時間だけという短い間でも、麻未ちゃんと一緒にいられることを喜んでいた。

 

だけど、やっぱり内心おかしいなと思った。

だって、これって。

ただ足に使われてるだけって、そんな気がする。

歩いて帰るのが面倒だから乗せて、ってそう聞こえる。

気がする。

相手を信じる事しかできない

そんなこんなしているうちに。

ひらりが神妙な面持ちで私にこう言ってきた。

「ママ。かんなちゃんから聞いたんだけど。麻未ちゃん、私の家が汚いから遊びに行きたくないって言ってたんだって。」

 

ああ。

きたな。

やっぱりこうきたか。

 

私はすぐにわかった。

ひらりにこう言ってくるってことは、麻未ちゃんにも何か吹き込んでるだろうな。

それで、最近ずっと様子がおかしかったのか。

 

ちなみに、我が家は。

自分で言うのもなんだけど、汚いとは程遠い家のはずだ。

 

部屋に物を出しておかない主義なのは、掃除がしやすいから。

そう、それだけ私は掃除をしている。

家も新築で建てたし。

汚いわけがない。

 

だから、麻未ちゃんが「汚いから行きたくない」と言ってるとは、到底思えない。

 

ひらりは、かんなちゃんから聞いたことを真剣に受け止めていた。

麻未ちゃんに「私の家が汚いから遊びたくないって言った?」と、本人に確認できないのがいやらしいところだ。

 

もし本当に言ってたら。

「そんな事言ってない」となるし。

もし本当に言ってなくても

「そんな事言ってない」になる。

 

どちらにしても「そんな事言ってないよ。」の言葉しか返ってこないから、真相はつかめない。

だからこそ、この「○○って言ってたよ」作戦は巧妙なのだ。

 

私はひらりにこう言うしかなかった。

 

麻未ちゃんとこれまで仲良くしてきたよね?

ひらり、麻未ちゃんてそういうこと言う子だった?

麻未ちゃんの事すき?

これからもお友達でいたい?

 

それなら。

麻未ちゃんはそんな事言わないって、信じるしかないよ。

 

これはあなたたちの仲を引き裂くための策略だから、引っかからないで。

なんて、そんな事言えない。

 

だって。

そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。

 

何がどうであっても。

2人がこれからも関係望むでのあれば。

麻未ちゃんとひらりができることはひとつしかない。

 

ただ、お互いを信じること。

それしか今はできることがない。

 

だんだんと離れていった

おそらく同じように嘘話を吹き込まれているであろう麻未ちゃんは、ひらりをどう思っているだろうか。

まだ小学2年生だし、長い時間かんなちゃんと一緒にいたら。

かんなちゃんの言ってることが本当だと思っちゃうかもしれないな。

 

だけどそれでも。

何かを決めるのも選ぶのも麻未ちゃんだから。

麻未ちゃんの意思を尊重するしかない。

 

そんなある日。

麻未ちゃんがまた、車に乗せて送って欲しいと言ってきた。

その日は学校が終わるのが遅くて、学校からそのまま習い事へ向かわなければならないほど、時間に余裕がなかった。

 

なので「今日はこのまま習い事に行くから家までは送れないんだ、ごめんね。」と断った。

 

それからだろうか。

麻未ちゃんは車に乗せてと言ってこなくなったし。

私の車にも近づいてこなくなった。

真実は見えずらい

麻未ちゃんはそれ以来、教室での様子も変わったようだ。

ひらりが言うに、一緒にいる時間も減ったし、かんなちゃんや桃亜ちゃん、万理華ちゃんと一緒にいることが多くなったそうだ。

 

自分のまわりに。

真実を見せまいと画策する輩がいたら。

そしてその輩を、友人だと思って信用していたら。

 

きっと真実など求めないし、真実など見ようとも思わないだろう。

そして自分が嘘話を信じさせられているなんて、思いもしないだろう。

 

麻未ちゃんは。

パタリと家に遊びに来なくなった。

 

美鈴ちゃんのように。

悪口を吹き込まれてその気になって攻撃的にならないだけ、麻未ちゃんは優しいのかもしれない。

そっと離れていっただけの麻未ちゃんは、優しいのかもしれない。

 

だけど確実に。

麻未ちゃんはひらりのもとから去っていった。

 

1年生の頃から大切にしてきた麻未ちゃんとの関係が。

かんなちゃんの策略によって、終焉を迎えた。

 

いや、かんなちゃんの策略なのかな。

もっとはっきり言ってしまえば、これって三津屋さんの策略なのかもしれない。

 

近づかないのが互いのため

2年生の中頃から、麻未ちゃんとは疎遠になって。

それ以来麻未ちゃんは遊びにもこないし、教室でもひらりと一緒にはいないらしい。

 

ひらりが話しかければ返事はするし、無視するとか積極的に避けるという状態ではないものの。

以前のような親密さはもう残っていないようだった。

 

麻未ちゃんが離れていったばかりの頃は、ひらりもだいぶ悲しかったようだけど。

自分よりも、他の子と仲良くしたいというのなら仕方がない、と最終的には割り切っていた。

 

教室にいるのはご近所の子どもばかりではない。

学童に行っている子どもばかりでもない。

 

家は近くないけど、学童に行ってない子。

そのカテゴリーの子達もちゃんと教室にはいて、ひらりと仲良くしてくれていた。

 

三津屋さんの息がかかっていなければ、普通に友人としてつきあえるのにと見ていて思う。

 

三津屋さんは自分のやっているママ友いじめに正当性を感じているのかもしれないけど、親を伝って子を通して。

子ども達の関係をコントロールしようなんて、本当に罪深いことだ。

目から伝わるもの

2年の終わり頃になって。

車でお迎えに来ていた私は、車の前を通り過ぎる麻未ちゃんを見かけた。

 

かんなちゃんと一緒にいるものの、あまり楽しそうにはみえなかった。

 

次の瞬間私と麻未ちゃんの目があった。

麻未ちゃんの目から感じたもの。

 

それは懐かしむような面持ちで、後悔と悟りが滲んでいた。

 

麻未ちゃんは時間が経過することで、事の真相に気がついたのだろう。

自分が何に巻き込まれたのか、わかったのだろう。

 

そして、またひらりと仲良くしようとすれば。

今まで以上の力が加わってお互いにもっと苦しいことになる。

それがわかるから、何もしないし、何もできない。

 

麻未ちゃんの目から、そんな感情がみえた。

 

それからというもの。

送迎で待っている私の車の前を通り過ぎる時、麻未ちゃんは小さく手を振ってくるようになった。

それが今の麻未ちゃんにできる精一杯なんだろうと思った。

 

私に対してこういう風なら、きっと教室でもひらりのことをそっと見守ってくれてるんじゃないかな。

2人が楽しく遊ぶことはなくなったけど。

優しく思ってくれている。

そんな気がした。