2年生で仲の良かった「麻未ちゃん」と「良子ちゃん」とは、結局のところ引き離された挙句疎遠になってしまった。
子供の友人関係までコントロールしようとする三津屋さんの気配を感じながら。
私は何度も、子どもは子どもでしょ?!
どうしてそこまでできるの?
そう心の中で叫んでいた。
一緒に通学していた風華ちゃんもそう。
3年間穏やかにお付き合いしてきた細貝さんもそう。
麻未ちゃんも良子ちゃんも
私に仲の良いママ友がいたらダメですか?
ひらりに仲の良い友人がいたらダメですか?
人間関係に次々と横槍が入り。
私もひらりも翻弄され、困惑してきた。
どこまでいったら三津屋さんはこのいじめをやめてくれるのか。
どこまでいけば三津屋さんは満足するのか。
もうすぐ2学年が終わって3年生になる。
3年生ではクラス替えがあるから、また違った人間関係ができるだろう。
私はそこに希望を持つことにした。
きっと。
次こそは。
ひらりに良いお友達ができますように。
ひらりが楽しく学校に通えますように。
幼稚園つながりで
3年生になった。
偶然にも。
新しいクラスには、麻未ちゃんも良子ちゃんも桃亜ちゃんもいなかった。
2学年の終わりの個人懇談で。
先生に「どうしても一緒にして欲しくない子はいますか?」と聞かれ。
私は迷わず「細貝美鈴ちゃん」の名前をあげた。
申し訳ないけど、とにかく危ないから。
これ以上近づいたら身の危険を感じるので、細貝さんだけは名前を挙げさせてもらった。
なので、美鈴ちゃんが一緒じゃないのは予定通り。
最近の小学校は、こうやってクラス替えの際に希望を聞いてくれるようになってるらしい。
賛否あるとは思うけど、私はこのシステムに救われたと思った。
意外なお友達
ひらりが3年生になって仲良くなったのは、意外な人物だった。
幼稚園の頃、山辺さんが主導のいじめにあって。
その時の右腕だった「坂東さん」。
ひらりは3年生になって。
坂東さんの娘さんである「泉ちゃん」と仲良くなっていた。
幼稚園での一件から、どうも山辺さんと坂東さんの関係性に変化があったようだ。
おそらくは。
坂東さんも山辺さんに情報を操作され、正義感に火を付けられ、あんなふうに山辺さんに協力していたのだろう。
今山辺さんとは、そこまで密なお付き合いをしていないようで。
山辺さんと坂東さんが一緒にいるところを見かけるのは、ほとんどなくなっていた。
泉ちゃんは朝、学校にくるのがとても早い。
児童玄関が開く前には学校に到着している。
同じくひらりも早いので、それで仲良くなったらしい。
2人で教室に一番乗りして。
黒板を好きに使ったり、一緒に朝学習の準備をしたりと、楽しくお付き合いしているようだった。
私と坂東さん。
確かに親同士は色々あったけど。
学校で坂東さんにお会いした時。
挨拶をしたら、ちゃんと返してくれた。
そして子ども達の関係も、そっと見守ってくれているようにみえた。
色々あっても。
人は変わる。
子ども達も子ども達で成長している。
このまま、泉ちゃんとひらりの関係を見守っていきたいな。
私は暖かな気持ちでそう思っていた。
いちいち文句を言う子、再び
そんな矢先、困ったことがあった。
やっぱりと言えば、やっぱり。
予定通りと言えば、予定通り。
ひらりが2年生の時に苦しめられた、やることなすこと監視して「文句を言う子」が現れた。
これまでそれをやっていたAちゃんは別のクラスだから、今度は違う子。
体が大きくて、声が大きい、ジャイアンタイプの女の子だった。
そしてやっぱり、その子も学童の子だった。
側近は常に2~3人連れていて、口裏合わせや嘘の証言もばっちりな体制のようだ。
ひらりはその子に付きまとわれて、毎日辟易としていた。
疲れた顔をして学校から帰ってくる。
担任の先生に、自分から相談してみてごらんと言ってみた。
真っ先に親が出て行ってしまっては、子ども同士の関係に影響する。
まずは子どもの方から相談、と思った。
ひらりが先生に相談すると。
なんとそのジャイアンちゃんと、席替えで隣の席にされてしまった・・・。
おいおい。
先生はどうやら、2人が仲良くなれるように隣同士にしたようだけど。
やっぱり側近がいて口裏を合わせて誤魔化されたら、全然本当のことが伝わらないんだなと思った。
良くない評判を広める
そして、このジャイアンちゃんには他にも困ったところがあった。
それは。
ひらりにつきまとってあれこれ批判した後。
それを周りの子に広める事だ。
「ひらりちゃんさ、さっき○○してて。私が注意しても全然聞かなくて。本当に自己中心的な子で困る。」
とか。
「みんな知ってる?これさ、大きな声じゃ言えないんだけど、ひらりちゃんってなんか臭いんだよぉ。今度嗅いでみて。」
とか。
まだ3年生でどの子も口が軽いのか、話が巡り巡ってひらりの耳にも届いた。
さすがに「臭い」とまで言われていたのはショックだったようで。
ママ洗剤変えてとか、シャンプー変えようとか。
ひらりがすごく気にし始めてしまって。
母として本当に胸が痛んだ。
ひらりはジャイアンちゃんのおかげで。
新しいクラスだというのに、クラスの女子に笑われたり軽く扱われたりするようになってしまった。
こんな時。
こんな時、母として私は何をしたらいいんだろう。
どうしてあげたらいいんだろう。
私のこれまでの経験なんて、こんな時全く役に立たない気がした。
悲しくて、悔しくて、痛くて。
今すぐ私がひらりと替わってあげたいくらいだった。
大切なひらりを傷つけないで欲しい。
大切なひらりに悲しい思いをさせないでほしい。
母として、心がちぎれるほど。
この子を守ってあげたいと望んでいた。
垣間見えた役割分担
困ったことはこれだけではなかった。
学童の陰のボスであろう「桃亜ちゃん」とクラスが分かれたので、もう友人を連れて行かれるような引き離され方はしないだろうと思っていた。
ところが。
またしても始まってしまった。
仲良くしていた泉ちゃんが。
ご近所女子メンバーの「澤智花ちゃん」に連れて行かれるようになった。
え、なんで?
今度は智花ちゃんが??
なんで智花ちゃんがそんなこと、って思うけど。
少し考えれば、どういうカラクリかわかる気がする。
桃亜ちゃんに指示をうけてるなら、それくらいのことやりそう。
なぜなら。
桃亜ちゃんが学童のボスだから。
学童で過ごす時間を快適にしたいと思えば。
桃亜ちゃんの要望を叶えようとするだろう。
そうすれば自分の身は安泰だし。
学童での地位も保証される。
そして、桃亜ちゃんの要望は母である三津屋さんの要望。
こうやって彼女達親子は暗躍しているのだろう。
意図して友達と引き離す
ひらりと泉ちゃんは幼稚園つながりで面識もあり、すぐ打ち解けた。
3年生が始まってすぐに仲良くなったのも、よくわかる。
だけど智花ちゃんにとって泉ちゃんは。
このクラスになって初めて知り合った相手。
そんな智花ちゃんが。
ひらりと泉ちゃんの間に割って入ってまで、泉ちゃんに興味があるとは思えない。
どう考えても。
泉ちゃんが、ひらりと仲良くしてるから連れて行くんだよね?
麻未ちゃんもそうだった。
良子ちゃんもそうだった。
それで今度は泉ちゃんも?
これだけ何度も同じことがおこれば、私にだってわかる。
意図してやってるよね?
ひらりがクラスに居づらくなるように、攻撃役を置いて。
その攻撃役が伸び伸びと活動できるように、補佐役を置いて。
ひらりに友人ができないように、引き離し役を置いて。
こうやって新しいクラスになったのに、また同じことが始まった。
近所の子と学童の子を動員して。
三津屋さんのしつこくて粘着質な。
どろりとした陰湿な悪意を感じざるを得なかった。