ひらりのお腹の調子が戻らないので、なかなか体力が戻ってこない。
普通の食事がとれなくて。
無理して食べると腹痛になるしで。
この状態では学校に行けない。
まず給食が食べられない。
体がへろへろで、授業中座ってられるかもわからないくらい。
家でも。
ずっと寝たり起きたりしながら、たっぷり休憩をとらないと安定しない体調で。
そんな日が続いていた。
だけど、そんな状態でありながらも。
ひらりは習い事だけは行きたいと言っていた。
みんなに会いたい。
一緒に過ごしたい。
だから頑張って治す。
そう言っていた。
わたしもひらりも。
どれだけ休んだらお腹が治るのかわからないまま。
体力が回復するのを待ちながら。
2人で穏やかでゆっくりした時間を過ごしつつ。
焦らずこの体調に向き合っていこうと、覚悟を決めていた。
学校を休み続ける
結局のところ。
肺炎による熱が下がっても学校に行ける状態にはならなくて。
すでに、かれこれ2週間は学校に行っていなかった。
前回の風邪でも、何日かパラパラ休んだうえに。
今度はずっとお休みしている。
学校にも、お休みの連絡を入れるのが申し訳なくなって。
行けそうになったら連絡します、という対応にさせてもらった。
私は。
そもそも学校に行くのが、子どもにとって一番大切なことだとは思っていなかった。
それはやはり。
自分がいじめにあっていたからこそ、学校が全てではないと思うから。
学校は一つの手段であって。
学校にいかなかったら人生がどうにかなっちゃうなんて、そんなことはないと思うから。
学校でしか学べない事もあるし、この社会で生きて行くためにも学校は必要。
だけどそれ以上に。
色々な経験から学ぶこと、学べる姿勢が大事かなと思う。
いじめからも、こんな体調不良からも。
ピンチのときこそしっかりと自分自身を見つめて。
どう受け止めるか、どう考えるか、心に問いかけて。
そうやって前向きに生きてゆく術を学ぶのも、人生に必要だと思う。
だから学校をお休みしていることに、罪悪感もなかったし焦りもなかった。
ひらりも特に学校に行きたいと言わなかったし。
なかなか体調が戻らないのを不安に思いながらも。
のーんびり、親子でまったりとした時間を過ごしていた。
自ら点滴をしたがる
なかなか体が回復しないこともあって、また小児科へ行った。
お腹が痛くて食べれないまま、自宅で様子を見続けるわけにはいかない。
するとひらりは。
病院の先生に自ら「点滴してください!」と言うようになった。
そして、いいよと言われる前にベッドに横になろうとする。
どうやら。
点滴をすると少し元気になるのが自分でもわかっているようで。
その勢いで習い事に行くつもりらしい。
前向きな気持ち、明るい気持ち、そういった部分も大切だと思うので。
なんとか習い事には連れて行ってあげたかった。
小児科の先生も点滴をしてくれて、短い時間なら習い事に行ってもいいよと言ってくれた。
昔は腕に針が刺さっているのがこわくて、怖がっていた点滴なのに。
今では進んで点滴を受けたがる事態。
これってむしろ。
かえって心配と言うか。
あんまり良い傾向じゃないと言うか。
だって点滴頼みの回復法なんて、ダメだよねぇ。
小児科では数日分の漢方の胃腸薬をもらって。
それでうどんを食べて、習い事へ向かった。
久々にみんなに会えて楽しかったようで。
体力が持たないので習い事すらも早退だったけど、とてもにこにこして戻ってきた。
子どもの笑顔が見れたこと。
それが本当に胸がじんわりするほど幸せで。
健康と。
なんでもないような当たり前の生活が、こんなにもありがたいことだったって、改めて感じた。
しばらくお休みしていた習い事も。
ひらりを迎えてくれる友人たちがいてくれて、本当に幸せだなって思った。
なかなか回復しない、先が見えない状況のなかでも。
こうやって、私達親子は幸せを感じられる。
自分たちを囲むこの環境に、感謝することができる。
学校で、地域で。
いじめの最中にいても。
それでも幸せを感じられた。
この世界は辛い事も多いけど。
それでもきっと。
私達親子はやっていける。
そう思える出来事だった。
食べ物を消化できない
処方してもらった漢方の胃薬は、効いてるのか効いてないないのかわからない状態で。
調子が良くなってきたと思って食べると、またお腹が痛くなって。
3歩進んで2歩戻るような、そんな状態だった。
ひらりは。
食べたらお腹が痛くなるのは分かってるけど、食欲は出てきていた。
だから食べたくなっちゃう。
食欲のままに、食べたいものを。
それで、無理して食べたいものを食べちゃうと・・・。
案の定全く消化されなくて。
胃で留まってしまうようで。
食べたはいいが気持ち悪くなっていて。
胃を押しただけで、全部でちゃうこともあった。
何が食べられるのか、試しながらの毎日で。
だけどその結果が食べてすぐわかるものではなかったから、ものすごく手探りだった。
消化できるのはうどんだけ
結局のところ。
安定して食べられるのは、いまだにうどんだけだった。
その頃すでに学校は1カ月近くお休みしていた。
昼間は家でのんびりしながら自宅学習をして。
夕方から習い事だけ行く生活。
隣に住んでいる桃亜ちゃんは。
隣に住んでいるけど、1ヶ月もお休みしているひらりに何も言ってこなかった。
プリント類も先生か、別の子が届けてくれていた。
お休みしてるけど大丈夫?なんていうお手紙だって、もちろんない。
やっぱりな、と思う。
同じクラスで、クラスメイトだけど。
だけど全然関わる気がないし、心配もしないし、気遣いもしない。
これが私と三津屋さんの関係であり、ひらりと桃亜ちゃんの関係。
こんな状態の学校に。
ひらりはまた行くのだろうか。
行けるのだろうか。
お腹の調子は若干良くなってる程度。
一度うどんじゃないものを無理やり食べてみた。
吐いてしまわないように、分量を少なめにして食後は体を休ませて。
そうしてみたら、ちゃんと胃は通過したものの。
今度は。
その・・・。
出てこなくなった。
出てこなくなっちゃって、お腹がぽっこーんとし始めた。
これはまずいと、また小児科へ行き。
今度はお腹にたまったものが出るような処置を受けた。
それが刺激になったのか、吐き気まで催してしまい。
本当にカオスだった。
もう。
これは本当にどうしたらいいんだろう。
全然。
全然もとに戻る気がしなかった。
原因不明なことに追い詰められる
結局のところ、いつまでたっても一進一退で回復の兆しはみえなかった。
これまでゆったり構えていた私も。
さすがに1カ月も状況が好転しないことに、疑問と焦りを感じ始めた。
こんなに何度も病院に行ってるのに。
毎日ひらりの体調に気を配っているのに。
平気な顔をしながら毎日ひらりに接しているけど。
本当にこのままでいいんだろうかって、そういう思いが強くなっていた。
こんなに病院に通ってるのに。
ほぼ毎回点滴もしてのに。
こんなに回復しない状態のひらりを、小児科の先生はどう思っているんだろうか。
私の気持ちは徐々に落ち込んでいった。
私が足りないんじゃないか、私が母として何か見落としてるんじゃないか。
もしかして、わが子を助けられないのは私の力不足ではないのか。
そんな風に。
ちょっとずつ、気持ちが沈んでいった。
大病院を紹介してもらう
気持ちが落ち込む一番の原因を考えてみた。
どうしてこんなに気が滅入るんだろう。
それはやっぱり。
この腹痛の「原因がわからないこと」だった。
ひらりのお腹が治らない、その原因がわからない。
原因がはっきりしないから、対処が正しいのか間違っているのかさえ分からない。
今通っている小児科では、対処はしっかりしてくれるし、検査もしてくれるし、なんとか原因を見つけようとしてくれてはいる。
だけど、やっぱり探れていない。
それなら。
もう十分今の小児科に通ったし。
もっと大きい病院を紹介してもらおう、そう考えた。
もっと色々な検査をしてもらうか、それか色々な症例から原因を探ってもらおう。
そうだ。
なぜこうなっているのか、原因が知りたい。
この腹痛の理由を知らなければ。
かかりつけ医だった小児科の先生に、大病院への紹介をお願いしたら。
先生もそのほうがいいかなと思っていたそうだ。
早速紹介状を書いてもらい、ひらりは大病院へ診察に行くことになった。
これできっと原因が分かる。
落ち込んでいた気持ちが吹き飛び、希望の光が見えたように感じていた。